Book13 のバックアップソース(No.1)

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[[Seminar]]

『プラズマプロセスにおける気中・液中のラジカル・イオン計測技術』向け

*閾値イオン化による質量分析での分子状ラジカルやイオン計測

概要 プラズマが生成する気中・液中のラジカル・イオンが中心となって進行する化学反応は,プラズマプロセスを制御する上で重要である.気中・液中のラジカル・イオンの挙動を理解するため,計測技術の発展が望まれている.本稿では,プラズマを用いた1)カーボン系の膜の堆積と,2)フルオロカーボン系のエッチングの反応過程の解析結果を元に議論を進める.

1.はじめに
 プラズマプロセスでは,圧力がPaレベルの低圧下では主にイオンが,被処理表面との間に形成されるシースを介して,高エネルギーに加速されて衝突する効果を有する.圧力が大気圧に近づくにつれ,ガス密度に応じて,ガスの平均自由行程は短くなり,イオンのシース加速による衝突の効果は失われていき,ラジカル(電荷中性の化学活性種の総称として)やプラズマ発光からのフォトンの影響が大きくなる(図1).プラズマプロセスを理解するには,ラジカル・イオンと光の照射を伴い,それらの相乗効果をもつ化学反応について,既存の物理化学の知識を拡張して,プラズマと表面の相互作用の原理を解明する新たな学理,低温プラズマ科学を究めなければならない.
低温プラズマ科学では,各相の界面で生じる物質とエネルギーの流れがある.プロセス後の終状態には熱平衡状態に達し,熱力学的な平衡論が論じられる.但し,プラズマからの粒子は,始状態から各イベントで反応速度に基づき作用し,速度論が論じられる.プラズマプロセスでは励起した反応種の存在から,非熱的に速度論的に反応が生じる.簡単な例を挙げて説明すれば,二核A,Bからなる分子ABと別のCとの反応によって生成物ACを得る反応において,熱プロセスではABの熱解離によりA・+B・(不対電子を・で示す)を生じ,このラジカルA・とCが反応してACに至る.光化学ではABの光励起AB+光→AB*→A・+B・(励起状態は*を付す)の解離を生じる.プラズマ化学ではABへの電子衝突により,AB+e-→A・+B・の解離,→(AB)*の励起,→(AB)+や(AB)*+e-→(AB)*+ の電離,AB+C*→A・+B・などの反応が同時平行して生じる.殊に,反応で生じるラジカル量は1011cm-3レベルの高密度で得られるため,光反応とは異なる様相を示す.すなわち,プラズマプロセスでは,電子の衝突という物理作用を起点にし,高密度な化学的な活性種が生成され,系として励起状態となり,非熱的に化学反応が連鎖的に引き起こされ,この励起状態の系が緩和していく.短寿命なイオン・ラジカルと,それらの相乗効果を含む,いわば非平衡反応場での化学反応の理解が求められている.

2.カーボン成膜時のプラズマの分析
 炭素の同素体にはダイアモンドやグラファイト,フラーレン,ナノチューブ,グラフェン,ナノウォールなど多く知られている.ダイアモンドはsp3混成のCが結晶構造をもち,グラファイトではsp2混成のCが二次元に6員環を構成する構造をもっている.sp3とsp2で結合するCが混在する膜は,長周期での結晶構造をもたない為,アモルファスカーボン(a-C)膜と呼ばれる.このa-C膜には水素が含まれると水素化a-C(a-C:H)膜やポリマー膜,またHが少なくsp3成分が多く含む場合にはダイアモンドライクカーボン(DLC)膜などとも呼ばれる.原子間の結合に着目し,ミクロにみたsp2-C=Cとsp3-C-C,C-Hの混在状態を制御しながら,マクロな機械的物性や電子的物性が制御できるため,その成膜のメカニズムを理解することは有益である.
装置で制御される成膜条件パラメータには,
1)イオン:組成,フラックスとエネルギー,
2)ラジカル:組成とフラックス.
が挙げられる.カーボン成膜へのイオンのエネルギーの影響はsubplantationモデルが提唱されている.イオンエネルギーが30eV/atomの閾値を超えると,基板表面近傍で原子-原子結合変位を起こしてC-Hの水素が脱離し,sp2-Cとsp3-Cの成分が多く形成される.さらに,イオンエネルギーが100eV/atomを超えると,局所的に急昇温の効果によって,sp2からsp3をもつCのクラスタを形成する[2].この通り,イオンエネルギーは膜構造の制御上,大きな影響をもつ.
成膜されたカーボン膜の物性はラマン散乱分光で評価される.a-C:H膜のラマンスペクトルには1350cm-1のDバンドと1580cm-1のGバンド,さらに高調波成分が2500~3500cm-1に検出される(図2).sp2の閉環構造からなるグラフェンの横光学(TO)モードは1580cm-1のGバンドにあり,グラフェンにエッジが存在することで,Dバンド(1350cm-1)とD'バンド(Gバンドの高波数側1640cm-1)を生じる[3].グラフェンに欠陥構造が導入されるとDバンド強度が増加する.したがって,DバンドとGバンドの強度比を求め,欠陥導入具合の指標とすることが多い.Gバンド幅が100cm-1 以下では,欠陥導入によるナノグラファイト(nc-G)化を示している(図2右).Gバンド幅が100 cm-1 以上では,Gバンドの中心位置が低波数側にシフトしていく.さらにa-C:HのGバンド幅が拡幅することは,nc成分がring成分に分解されていくことで,グラファイト(nc),孤立する6員環構造(ring),sp2-Cの鎖状構造(olefin)の3つのクラスタ構造を含むことを示す[3,5].Gバンドの中心波数が高いほど, sp3-C成分が増え,膜密度が高く,逆にolefinの成分が低い.グラファイトは可視域全域に吸収をもち,孤立するほど紫外域に吸収がシフトしていくことから,励起波長に依存してラマン散乱断面積が異なる.ncとring,olefinのそれぞれの成分比は,多波長ラマン測定により調べる事ができる[3,5].
カーボン膜の堆積には,メタン(CH4)などの炭化水素ガスと水素(H2)を混合し,プラズマを生成する.電子衝突によって電離と解離を生じ,数多くのイオン・ラジカルが生成され,加熱した基板上の表面反応によって堆積を生じる(図3).通常のプロセスプラズマ(低圧力(約1~1kPa)下のCH4/H2プラズマ)では,印加する励起パワーに依存して,電子密度neは109~1011 cm-3である.正に帯電するイオン(正イオン)の総数ni~neであり,プラズマシースを介してイオンフラックス0.6 ni ubをもち表面に入射する.ここで,ubはBohm(ボーム)速度である(図3c).シースポテンシャルはバイアスの電圧を印加することで変調され,加速されたイオンが表面に入射する(図3d).電荷中性のラジカルは,uthの熱速度をもつ熱フラックス1/4 ng uthをもち表面に入射する.ラジカルを含む中性ガスは流体の性質をもつ.粘性流ならば,堆積表面の直上にガス流れをもたない滞留層が存在し,分子流でも基板表面に垂直方向に密度分布をもつ(図3e).表面に入射したラジカルの全フラックスのうち,大半は表面で付着することなく反射する.一部が付着(付着確率をα)し,さらにその一部が表面で反応(反応確率をβ)して成膜する.一部の付着成分を差し引いてガス流れ側に戻っていくので,基板表面近傍のラジカル密度はα/(2-α)に比例した勾配をもつ(図3e,f).
プラズマ中の粒子は,次式のBoltzmann方程式に従う. 
 
ここで,rは粒子位置,wは粒子速度,fは電子の速度分布関数である.左辺第一項から緩和,圧力場,電磁気力場の作用,右辺は衝突による速度分布関数fの変化を示している.電子と衝突ガスとの間の衝突反応の断面積データが用意されている.例えばBolsig+等のツールを使って,Boltzmann方程式を解くことで,電子の速度分布関数が求まる.この結果,プラズマ中の電子が粒子衝突によって生じる反応速度kは,電子の速度分布関数fをもつ速度vにわたり断面積σとの積を積分した,統計平均<σv>に比例して反応生成物を単位時間に生じる. 
 
ここで,τはガスの滞在時間である.プラズマ中に滞在するほど,電子衝突反応が進行する.基本的に分子の大きさで断面積が大きくなる為,数eVの電子温度では,CH4に比べC2H2やC3H8の方が反応速度は1桁程度高い.定量的にイオンとラジカルを取り扱う.
CH4は電子衝突により,CH4+,CH3+,CH2+,CH+イオンを生成する.この閾値エネルギーについて,標的粒子とその生成イオンについてTable Ⅰに示す.表の左から,CH4から電子エネルギーの閾値エネルギー,続いてCH3やCH2,CHからのイオン化の閾値エネルギーを示している.CH3+を検出する場合,衝撃する電子エネルギーを9.8~14.3eVの間にすることで, CH3ラジカルがイオン化したCH3+の検出となり,CH3ラジカルを測定できる[8].

Table Ⅰ Threshold ionization energy of C1 (left) and C2 (right) hydrocarbons (eV) [6]
 
Ion 	CH4 →	CH3 →	CH2 →	CH →	Ref.
CH4+	12.9	-	-	-	[6,7]
CH3+	14.3	9.8	-	-	[8]
CH2+	15.1	15.1	10.3	-	[9]
CH+	19.9	15.6		10.6	[10]


Ion	C2H4 →	C2H2 →	C2H →	C2 →
C2H4+	10.5	-	-	-
C2H2+	13.1	11.4	-	-
C2H+	18.7	17.4	11.6	-
C2+	24.5	18.4		11.4
CH2+	17.8	19.7	-	-
CH+	17.7	20.8	-	-
 
次に,CH4/H2の混合ガスを導入して,平行平板型の電極配置の励起側に100MHz電力を印加して,基板を設置する側に13.56MHz電力を印加して,二周波容量結合プラズマを生成させた時,平行平板電極の側壁部に四重極質量分析器(QMS; HIDEN EQP500)を100µm径のオリフィスを設けて取り付けて計測された質量スペクトルの例を図4に示す.導入したCH4ガスのC1(炭素数が1という意)の分子イオンから重合が進んだC2からC6程度の炭化水素からなるイオンが検出された.既知のイオン化断面積をもつ分子のイオン検出強度を使って,QMSの検出における装置関数を基準化した.
100MHzの励起電力を変えることで,neを1010~1011cm-3の範囲で変えた時,CH3+とC2H4+の分子イオンは比例して増加するのに対して,C3やC4のイオンは変化しなかった.ne~109cm-3と低い場合,CH4から重合して大きい分子が検出される(図4b).ne>1010cm-3と高い場合,CH4は反応して枯渇しているため,これらC3以上の高次ラジカルは壁近傍のプラズマ密度が低い領域や,壁などから脱離して生成している可能性が高い.
CH4とH2の混合ガスのプラズマ中(13.56 MHz)のガス反応についてモデル化して計算した結果(圧力6.7Paか100Pa;電子密度は1010cm-3レベル)が報告されている[11-13].主な反応をTable Ⅱに挙げる.ラジカルには,原料C1のCH4から解離するCH3ラジカルが最も多い.この CH3が中性分子間の衝突反応によって, C2H6,C2H2,C3H8,C2H4を生成するC2,C3への重合がみられる.この結果,典型的なプラズマ中では,中性粒子密度はCH3ラジカル,H原子,C2H5,CH2の順である.イオンは,水素の密度にも依存して,高圧になるほど,H+の付加イオンが増え,CH5+が最も多い[14,15].イオンの密度は, CH5+,C2H5+,CH3+,CH4+の順に高い[12].重合が気相で進み,炭素数の多い分子を生成される.この重合を起点に直鎖か員環構造の形成についても考えなければならない.この問題は,煤のできる機構とも同義であり,CHEMKIN型の反応モデルにAppel-Bockhorn-Frenklach(ABF)モデルが提案されている[17].表面膜堆積する為には,煤の形成機構は避けなければならない.員環構造の形成過程は,ミクロにみると長い鎖状分子から折り畳まれる機構が有力である[18,19].この指摘からも,原料の不飽和度に依存することなく,芳香族炭素はアルカン>アルケン>アルキンの順で,むしろ飽和炭化水素が原料の方が多い.但し,プラズマでは,多環炭素端の4炭素部分にC2ラジカルが付着反応する経路で,員環構造の連続成長を促進する[19].

Table Ⅱ. Electron induced reactions with molecules and ion-molecule reactions. [12,13]
	Reactions
		Reactions
Ionization	CH4 + e- → CH4+ + 2e-
	Ion-molecule	CH4 + CH4+ → CH5+ + CH3

Ionization	CH4 + e- → CH3+ + H + 2e-
	Ion-molecule	CH4 + CH3+ → C2H5+ + H2
Dissociation	CH4 + e- → CH3 + H + e-
	Ion-molecule	CH4 + H3+ → CH5+ + H2
Dissociation	CH4 + e- → CH2 + H2 + e-
	Ion-molecule	C2H6 + H3+ → C2H5+ + 2H2
Ionization	C2H6 + e- → C2H4+ + H2 + 2e-		Ion-molecule	C2H4 + H3+ → C2H5+ + H2
Dissociation	C2H6 + e- → C2H5* + H + e-		Neutral	CH4 + CH3 → C2H5 + H2
Ionization	C2H4 + e- → C2H4+ + 2e-		Neutral	CH4 + CH2 → C2H4 + H2
Dissociation	C2H4 + e- → C2H2 + 2H + e-		Neutral	CH4 + CH2 → 2 CH3
Ionization	C2H2 + e- → C2H2+ + 2e-		Neutral	CH4 + CH → C2H5 
Dissociation	C3H8 + e- → C2H4 + CH4 + e-		Ion-molecule	H2+ + H2 → H3+ + H

原料枯渇が生じる条件,つまり,数Paの低圧で,Ar希釈や励起パワーを上げていくと,C2系の分子種は減少していく[13].つまり,重合は抑制される.炭化水素のガス分圧は,気相中のラジカルとイオンの密度を変える.導入ガス種をC2H2とH2,H2の代わりにNH3に変えても,ラジカルとイオンの組成が劇的に変化することはない[16].
気相から表面にラジカル・イオンが,カーボン成膜の反応前駆体として吸着する.反応前駆体≡C-Hから,CHx(g)(x:0-4)→C(s)+x H(g)の水素脱離の反応でC-C結合を生成する(gは気相,sは表面吸着の種の意)(図5).炭化水素が分解して水素が気相に脱離する反応速度は
exp(-ΔG/RT)に比例するとみなせる.ここで,自由エネルギーΔG=ΔH―TΔS;エンタルピーΔHとエントロピーΔSは既知である.この水素脱離反応では,大凡ΔG~100kJ/mol(~1eV)程度である[20].比較的低温(<700℃)では,比較的高いΔGによってCH4やCH3からの水素が脱離する反応が律速するため, CH4に比べC2H2の方が表面の吸着確率が高く,水素脱離の反応律速を受けにくい.そのため,C2前駆体の増加がsp2-を多く含むカーボン膜の成長を促進する[16].一方,sp3-を主成分にするには,高温で熱処理を得て脱水素化を進めると同時に,sp2-成分は脱離除去しながら,イオン衝撃による急昇温化効果でsp3カーボン化しなければならない.
カーボン成膜は,気相の炭化水素ラジカルが反応前駆体として表面に吸着し,水素原子とイオンによる脱水素化を基板温度の効果も受けながら進め,イオンが表面に照射されることで,表面のC-Cの結合様相を制御できる.プラズマプロセスでは,成膜に至る反応のエネルギー障壁を実質的に取り除くことがポイントとなっている.この結果からもプロセス中のイオンとラジカルの計測することが,制御の要である.

3.計算化学を用いたイオン化過程の考察
イオン化ポテンシャルや,解離イオン化の反応経路を知る為に,量子化学計算(Gaussian 09)を活用する.対象となる分子について基底状態とイオン化した分子の構造とエネルギーについて,B3LYP/6-311G+(d,p)を使い,負イオン化した分子については,B3LYP/6-311G(d,p)とより精度の高いMP2/cc-pVDZとMP2/cc-pVTZを使って,普段から計算している.次に,最安定な構造から解離を生じると予想する結合の長さを段階的に変えた構造について,エネルギーを求めていくことで反応ポテンシャル曲面を求めた[21].
CH4の解離イオン化についての計算結果については既に報告されている[22]. 基底状態のCH4は正四面体の非常に対称性が高い構造(Td)である.電子は垂直遷移してイオン化(CH4+)した場合,最外殻電子はリュードベリ(Rydberg)状態のようになった分光結果を得る.より安定化した分子イオンの構造は,ヤーン・テラー(Jahn-Teller)効果を受けて歪んだ構造を取り,H+付加したCH5+イオンでは,元の正四面体構造に近い構造をもつためCH5+イオンの方が安定である. CH4のC2νの(変角)振動から,二つの水素が同時に脱離するCH2+とH2の解離イオン化を生じ易い[22].同様に,SiH4の計算からも変角振動経由で解離イオン化する様相が見られている[23].SiH4/H2のプラズマ実験の結果を説明する[24].さらに,ハイドロフルオロメタン(CF4, CF3,CHF3,CH2F2,CH3F)の解離プロセスについて計算した[21](図6).他にも,ハイドロフルオロエタン(C2H5F, C2H4F2, CH3CF3, C2H2F4, C2F6 ), c-C4F8,c-C5F8,c-C5HF7ほかの計算を報告した.
 
5.おわりに
 堆積とエッチングのプラズマプロセスにおけるイオンとラジカルの役割について述べてきた.閾値イオン化質量分析によるラジカルの検出方法について活用した例を紹介し,イオン化ポテンシャルの見積もりなどに計算化学を用いた例や,イオン化反応についての考察を述べた.
 プラズマプロセスの反応をよりよく理解するために,物理衝突を起点として生成するラジカル・イオンといった反応前駆体を構成する励起状態の生成から,その励起状態の緩和過程において連鎖的にみられる化学反応(PACR: Plasma activation and chemically relaxing reactions)の理解を進めている.プラズマプロセスを行い,求める材料特性を得られる装置の処理条件は発見的に開発されて,レシピの形で制御が為されてきた(図10).しかしながら,現実に行う実験回数を減らし,計算科学を活用したバーチャルな実験を行いながら,迅速な開発が求められている.今後は,プロセスの原理の理解に基づいた理論構築から,計算と実験が協働して,処理レシピの最適化した処理条件を開発していかなければならない.その為には,プラズマのプロセッシング中の反応過程で生じるラジカル・イオンの実時間その場で観測して,計測に基づいて理解してく重要性が,ますます高まっている.それにとどまらず,全ての粒子について実測することは不可能であるし,ラジカル・イオンを起点とする同時連鎖的に生じる複数の反応について,その反応ネットワークを解析しなければならない.したがって,プラズマプロセッシングの学理の探究は,既存科学の枠組みから拡張し,新たな低温プラズマ科学の理論構築をはじめ,さらに計算と実験が融合.連携して,複雑な反応のネットワークを階層的に解明することが切に望まれている.

 
図10 プラズマプロセッシングの学理の探究における理論と計算,実験の協働・融合・連携のアプローチ.[30]から改変 (Copyright (c) Japanese Journal of Applied Physics)

謝辞 本稿をまとめるにあたり,核融合研 伊藤篤 博士には有益な議論をいただいた.杉浦啓嗣 博士,賈凌雲 博士,近藤祐介 博士,名古屋大学 堀勝研究室の各位には,実験に協力いただいた.ここに感謝の意を表する.
 
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