Book12 の変更点


#author("2020-11-20T23:26:28+09:00","default:ishikawa","ishikawa")
[[Seminar]]

4.医療・バイオ応用プラズマ技術

*1.はじめに
 近年、非真空でガス温度の低い「非平衡大気圧プラズマ」の医療バイオへの応用の試みが多く報告されつつある。これまでは、真空での低温プラズマは、薄膜堆積やエッチング、表面改質といった応用分野において、主に固体材料を対象として利用され、その有用性はいうまでもない。バイオ応用の観点を含めてみれば、プラズマの表面に及ぼす作用は、水や細胞といった液体や生体が対象に拡がる。しかしながら、生体に関わる表面といわれても、多くのプラズマ研究者や技術者には(ご多分に洩れず著者であるが)、生物に慣れ親しんでいるとは言い難く、敬遠しがちなのではないだろうか。そこで、生物へのプラズマ作用を考える上で、必要と思われる基礎知識について復習(予習となるか)できるように概説し、この分野の最近の成果を紹介する。

*2.非平衡大気圧プラズマソース
 はじめにプラズマ源の開発背景について触れておく。プラズマエレクトロニクスの基本に立ち返り、プラズマの生成を考えれば、電離(電子とイオン対)反応の連続的な発生が、放電現象の源である(図2-1)。高電圧印加によって電子が加速され、電子(e−)は電荷中性のガスnに衝突し、反応式でe−+n→n++e−+e−となり、電子-イオン(n+)対の生成が支配する。電離反応は衝突する電子のもつエネルギー依存的に、閾値をもって生じ、他には励起や解離などの電子衝突反応も生じる。(図2-2)。これはプラズマを生成するガス種を選べば、多種多様な反応活性種を簡便に生成でき、電子・イオンにはじまり、反応活性な励起種・解離種(便宜的にラジカルと総称することもある)に加え、紫外線といった光が、プラズマと接した表面に作用できる。生成プロセスは、これらを統計的に含み、人為選択的に制御することは不可能であるが、有用な化学反応場をもたらし、温度は低いまま、光とラジカルなどが主役となり反応が進行する。
 大気圧といった高い圧力では、粒子間の衝突が頻繁に生じ、ガス温度が上がりやすい。生成に投入された電気エネルギーが効率的に消費されることも必要であり、いずれ熱的緩和が熱を発生させるので、この発生した熱は、系から空間的・時間的に緩和され消せれば、ガス温度を上げなくて済む。この状況では、空間的に拡散のプロセスが、プラズマ源を覆う周囲の壁や大気へ熱を移動する。つまり、空間的熱移動∝圧力/拡散距離×特性長の2乗に従うと見なせる(図2-3)。一方、プラズマ中で電子衝突によって運動量移行が支配的にガス温度を上げると近似すれば、時間的加熱∝電子質量÷ガス質量÷電子密度に従うと見なせる(図2-3)。このとき、統計的に衝突緩和時間τでもって緩和すると仮定すれば、熱統計的にエネルギー分布関数fの時間変化は、df/dt+ξ=-f/τに従い、時間的冷却が進む。ここでξは衝突項である。ともかく、加熱と冷却の比が(空間的にも時間的にも)、ガス温度を決めるので、この比が調節されればガス温度が上がらない、熱化を妨げた非平衡プラズマが大気圧下で実現する。逆に、プラズマに電気エネルギーが過剰に入ればアーク放電となり、ガス温度が高くなる。そのため、短時間パルス放電(時間的)やガス流(空間的)冷却によって、多くの非平衡大気圧プラズマソースの多くが開発されている(図2-4)。
 プラズマは物質の第4状態などと言われるが、物質の状態は圧力(密度)と温度で特徴付けられる。同様に、プラズマも電荷中性ガスと電子を構成するから、電子の温度とガスの温度、さらに電子の密度とガスの密度について、それぞれ考える。教科書的な説明では、直流で放電させると、その電流-電圧の振る舞いは、各モードに分類され、ガス圧が低い場合には、タウンゼント放電からグロー放電、アーク放電に遷移していき、大気圧近くの高い圧力では、ストリーマ放電からアーク放電に、いきなり遷移する(図2-5)。このようなアーク移行を防ぐために、誘電体(を間に挟んで)バリア放電により電流制限を与え、大気圧He下でパルス電圧印加によりストリーマ放電が実現した[2:2,3]。その後、大気圧下での非平衡プラズマ技術は発展し続けている。大気圧ストリーマ放電は使いやすい反面、プラズマ密度は1013cm-3程度であり、十分高いとは言えない。そこで、活性種の生成を高くするためにも、プラズマ密度が1015cm-3位にまで高い状態を得ようとすれば、アーク放電になりやすく、同時にガス温度を高温にする。この克服には、回路的な電流制限やガス流の原理を活用して、ガス温度を下げ、非平衡性が実現されている。
 現在では、電気放電によりプラズマが大気圧下で低いガス温度のまま生成できる装置ができ、プラズマを液体や生体に作用させる試みが多数みられるようになった。

*3.プラズマバイオ事始め
 農業や医療への応用は対象が生体となる。応用を述べる前に、理解の助けにも、最低限の生物の知識が必要となる。そこで、生命科学について復習できるよう(予習となるか)、生物へのプラズマ作用を知る上で、関連深い基礎知識をまとめてみる。

**3.1 生物の階層構造
 ここに限ったことではないが、プラズマバイオは複雑な系である。個だけなく全体をみなければ分からないことが多い。その意味でも、対象が、どの階層にあるのか、見極めることは必要である(図3-1)。DNAやタンパクなどの物質的ものから、細胞の分子生物学的なもの、さらに器官・組織、ヒトのレベルまで説明が多岐にわたる。
 生物とは、生命を宿している「モノ」である。日本 語では生物学の対象を指すかもしれない。生命(Life)は深遠すぎるので、英語で、BiologyまたはBiological matterである生物を考える。生物を特徴付けることには、1.体内と体外を分け隔てる(細胞)、2.遺伝情報(ゲノム)をもつ(タンパク合成)、3.エネルギー変換(代謝)(光合成、呼吸、食物摂取など)する、4.子孫を遺せる、5. 体内環境を保つこと、さらに進化、多様性と共通性を併せもつこと、が挙げられる。内外を隔てて、物質とエネルギーの変換(代謝)を、内外の状況変化に応じて反応し、ある種の平衡状態を恒常的に維持する機能を有している。この最小単位は、細胞であり、物質合成の機能により、分裂・複製が可能である。また、個々の生体や細胞は、子孫を遺して死するモノという掟がある。

**3.2 生理状態と病理
 正常な状態では、細胞は環境変化などに対して恒常的に応答し、適応する(図3-2)。過度に傷害を及ぼす刺激(酸素欠乏、栄養不足、化学物質、感染性物質、免疫反応、物理的刺激、老化、遺伝子異常)のレベルに達すれば、細胞傷害となり、アポトーシスという形でプログラム死や細胞内変化が顕在化する。自己修復を進め、傷害が可逆的なレベルで元に戻せればよいが、帰還不能点を超えれば、壊死に至る。生理状態の生物は、細胞死が自然に生じる恒常的な適応状態を保っている。

**3.3 血液凝固、炎症
 細胞の傷害の例には、外科手術が挙げられる。生体組織にメスが入いることで、血管から血液が吐出し、大量の出血はクリッピング等により止められなければ、生死に関わる重大事となる。同時に、漏出性の滲み出る出血もみられる。自然な生体反応では、創傷部に血小板を凝集させ、血中の因子を働かせ、(自然)凝固系が活性して、血液は凝固する。通常、血管内の血液は液状を保つように凝固抑制の機構が働いている。然もなくば、血管中で凝血塊(血栓)が形成されてしまうからである。血管が損傷した場合にのみ、速やかに止血栓を形成するように、厳密に制御されている。
 自然血液凝固系では数多くの凝固因子の連鎖反応を生じて、Ca+とトロンビンの活性化を経て、最終的にフィブリノーゲンからフィブリンへのポリマー架橋を形成し、不溶性となり凝固する。この連鎖反応の中で、同時にトロンビンなどの炎症因子がトリガーとなって、白血球や内皮細胞の活性化させ、炎症反応を引き起こす。傷害を受けた組織では“炎症”が発生し、傷害組織を排除しようとする防御反応がはじまる(図3-3)。感染菌などを原因とする防御反応は自然免疫系とも呼ばれる。生体自己制御的に応答する免疫系を働かせるために、組織に好中球(白血球)やリンパ球、マクロファージが浸潤し、急性炎症となって治癒に向かって反応する(図3-4)。炎症は、壊死した組織を水分とタンパク質に分解し、リンパ管から排出させることで止み、消炎と呼ばれ、組織再生となる。一方、急性炎症が進展して慢性炎症の状態ともなれば、血管新生が促され、背景組織である細胞外マトリクスが破壊されてしまい、繊維化が進み、瘢痕が残って治癒する経過を辿る。つまり、組織の機能は喪失されている。反対に、細胞および組織の再生が、構造と機能をほぼ完全に回復して、傷害は消散してしまう場合もある。多かれ少なかれ、ある程度の瘢痕を残して無傷の部分を機能し続けられるよう修復するにすぎない。この例が、火傷(やけど)で組織面の境目が癒着したり、瘢痕が増殖してケロイドである。

**3.4 生理状態の細胞:セントラルドグマの分子機械
 なぜ細胞は刺激に対して順応できるのか、生命科学の現代の知見から、細胞の応答はDNA上の遺伝子にプログラムされた精密な分子機械の働き、という答えが導ける。生理的な細胞は、遺伝情報に基づいて、DNA複製と細胞分裂を一連の細胞内イベントによって、制御しておこなっている(図3-5)。この一連のプロセスを「細胞周期」と呼び、この周期は核分裂を起こす分裂期(M相)と大半の間期からなり、この間期に細胞としての機能を発揮する。間期には、ギャップ期(G1相、G2相)に挟まれた核内のDNA複製される合成期間(S相)がある。細胞周期はM→G1→S→G2→Mの繰り返しである。この周期が回る時間は、サイクリン(タンパク質)の合成によって時計を刻み、規則正しい時間で繰り返されるよう、細胞の増殖調節の機能が備わっている。すなわち、反応の原料となるタンパク質を合成すると同時に、そのタンパク質の量がシグナルとなって動作している。細胞周期の繰り返しは、S相でDNA複製されるため、G2相には核内にDNAが2つ存在することから、判別できる。
 遺伝子を元にしてタンパク質の合成という、セントラルドグマの分子機械という形が見られる(図3-6)。この過程では、まずDNAをレプリソームによって複製し、メッセンジャーRNA(mRNA)を合成し、その塩基配列上のコドンに従ってアミノ酸の重合、ポリペプチド鎖の形成を経て、タンパク質が合成される。DNAは、核酸4種のポリマーであり、その配列はスタートコドンから始まる遺伝情報(ゲノム)である。さらに3塩基配列で、20種のアミノ酸をコードして、アミノ酸の重合体、タンパク質を合成する機構(転写)をもつ。合成されたタンパク質は酵素として働き、細胞内で化学的な反応を触媒する。ここで、細胞内の化学反応は複雑多岐に連鎖して、反応の生成物が再度、反応の上流の反応を修飾するフィードバックも含まれている。このようにタンパク質によって、遺伝子が発現する過程とシグナルが伝達する過程を含み、細胞内では、細胞内外からのシグナルに対して遺伝子が発現し、反応物を産生させ、働かせながら、さらに反応物を産生させる切れ目ない反応が起きているといえる。
 多細胞生物の増殖では、細胞や細胞の集まりの発生において、細胞の同じ遺伝子から発現する遺伝子の方向付けがなされる“分化”がみられる。発生の違いを決定づけるスイッチのようなものが存在する。DNA上の遺伝子や遺伝子の発現、アミノ酸からタンパク質の合成が、何らかの作用で変化すると、細胞の応答が変化する。

**3.5 ウイルス
 細胞の分子機械の特徴をうまく利用するモノが存在する。これがウイルスであり、自身の中に遺伝子DNAをもっていて、宿主細胞に感染して影響力をもつ。ウイルスは自身のDNAから宿主細胞の分子機械を使って、ウイルスの構成要素を合成させた後に、それら構成要素を寄せ集めてカプシド(タンパク質の殻)などに収めて、増殖させて、再度細胞外にでていける(図3-7)。細胞膜に接着できる構造をもつので、まず接着して、ウイルス自身の内包物である遺伝子を導入させ、細胞内では逆転写酵素を使ってDNAを合成させて、宿主の遺伝子に取り入れる。この過程で、細胞の優れたセントラルドグマの分子機械の応答をみることができる。一方で、ウイルスに感染した宿主は免疫機構により、生体レベルでの炎症などの応答が見られる。

**3.6 血糖値とホルモン(インシュリン)
分子機械により物質合成をおこなう細胞であるが、これを動かすエネルギーの流れ(代謝)も重要となる。光合成での光エネルギーであったり、食物摂取による化学エネルギーの形であったり、生化学反応に利用するエネルギーを得なければならない。遺伝子の発現に基づいたタンパク質の合成などで、生体が恒常的に平衡的な状態となる生理を保つためには、エネルギーの消費が欠かせない。また、これら反応の方向付けはエントロピーの最小化という形でみられる。
 実際の生化学反応では、多くにアデノシン3リン酸(ATP)の形でエネルギーを貯蔵し、その無機リン酸(P)を一つ放出することで同時に発生するエネルギー(20kbT~0.5eV)の利用がみられる。
その一つにグルコースの解糖系代謝によるATP産生がある。グルコースには6つの炭素があり、3つの炭素をもつピルビン酸に解糖する過程で2つのATPを産生する。
 このATPをエネルギーとして利用し、アミノ酸をはじめ、脂肪酸、塩基などの物質合成をおこなっている。このような解糖系では、酸素の利用によって回路が大きく変わってくる。嫌気状態では、ピルビン酸から乳酸への変換となり、ATPは2つしか生成しない。好気状態ではアセチルCoAとクエン酸回路から38のATPが生成される(図3-8)。グルコースと酸素の共存によって、実にうまくエネルギーの生体利用が可能となっている。ヒトであれば血液により体内に循環供給される。このように、エネルギーを効率的に得られる反面、糖が多くなるとタンパク質が糖化(メイラード反応)するなど、機能を失う障害を及ぼすことがある。そのため、肝臓では過剰なグルコースはグリコーゲンに変換(糖新生)して血糖値を一定にする調節機構が働く。この調節は、膵臓から分泌されるインスリン(血糖抑制)などのホルモンによってなされる。
 血糖の調整にはインスリン分泌が重要な役割を担っているが、このインスリン分泌が低減する病態は糖尿病と呼ばれる。現在、病態の発生が遺伝子レベルで解明され、患者の一部には遺伝子異常による機能不全を原因としている。そのため、根治には遺伝子治療に頼らざるを得ない。そのため、インシュリン放出機能を司る遺伝子を細胞に導入できれば、正常血糖値が常に得られるように、回復できることが期待される。

**3.7 臓器再生
 多細胞生物では、一つの受精卵から発生し、細胞は形質を変えながら分化して生体構造ができあがる。分化した後では不可逆的に多能性を失い、臓器などは組織としての機能を発揮する。このような遺伝子配列だけでは生じない形質がエピジェネティックに顕れる。臓器・組織では複数種の分化した細胞からなり、分化は一方的である。
 他方、生殖細胞など、一部の細胞では分化万能性をもち備えており、あらゆる体細胞種に分化できる。適切に分化誘導されれば、成体まで発生する。分化多能性の細胞とその分化誘導から、臓器の再生も不可能ではないことを意味している。
 分化多能性細胞は、iPS細胞の開発により、体細胞内にyamanaka因子と呼ばれる遺伝子(現在ではOct3/4とSox2が必須)を導入すると、分化多能性もつ細胞に初期化(再プログラミング)されることが分かってきた。このような背景からも、細胞内への遺伝子導入技術の発展が期待されている。課題として、分化多能性から分化が不十分に、未分化の細胞が含まれれば、(がんも同様)組織として機能しないので、初期化と分化誘導が制御されなくてはならない。目下研究が進行中のところである。

**3.8 がん(悪性新生物、悪性腫瘍)
 通常なら細胞死していくはずの細胞が形質転換して新生(非協調的な早い増殖)するものを腫瘍という。このとき、細胞は未分化で退形成しているため、発生母地の正常細胞とは形態的、機能的に異なっている。そのため、組織への浸潤や転移を生じると生体の生死を脅かす。この原因は、少なくとも体細胞上の遺伝子変異と分かってきた。
 がん原遺伝子とがん抑制遺伝子が存在することが明らかとなり、体細胞の遺伝子に変異が蓄積して、がんゲノムが完成した後に、がん幹細胞を元にする増殖が見られる。がんの表現型には、1) 自己増殖シグナル、2) 増殖停止命令回避、3) 細胞死回避、4) 無限増殖、5) 血管新生、6) 組織転位が見られる。つまり、遺伝子的に制御された細胞死であるアポトーシスの誘導に異常を来たすことが原因となる。この異常は、細胞内でのシグナル経路でみられる(図3-9)。例えば、BCL-2(アポトーシス抑制)遺伝子(遺伝子は斜体表記)が発現してbcl2タンパク質が合成されると、正常であればアポトーシス促進因子APAF-1が発現して、カスパーゼ(タンパク質分解を促進する)が発現していくが、この発現阻害がみられる。他にも、細胞膜上の腫瘍壊死因子(TNF)という受容体に、そのリガンドとなるFasLなどが会合すると、細胞内にシグナル誘導され、カスパーゼが活性化して細胞死に至る経路がある。このシグナル誘導は、キナーゼ(タンパク質)によるタンパク質のリン酸化がもたらされ、そのタンパク質が活性化されるといった経路をもつ。例えば、RAS-RAF-MAK-ERK(細胞増殖)といったタンパク質(シグナル)が連鎖的に関係する。他にもPI3K-AKT(細胞生存)などの経路がある。インスリンが細胞膜上のインスリン受容体に会合し、細胞内のPI3K活性化を経て、AKTがリン酸化により活性化される。このAKT活性化することで、細胞膜のグルコーストランスポーターを増加させ、細胞内へのグルコース取り込みを促進させるといった調節機構が働かせているので、生存シグナルである。このような相互関係から、いずれかのタンパクの発現が下がれば、アポトーシスが抑制される。
 がんの増殖では代謝経路についても特徴が見つかっている。正常細胞であれば嫌気解糖で乳酸を生成し、好気呼吸で電子伝達系を動かしてグルコースを代謝する。ところが、がんではどうも好気解糖をおこない、常に乳酸生成を伴なってエネルギーと物質を得ている結果、細胞への大量のグルコースの摂取が見られる。
ほかにも、前述の創傷治癒過程で炎症によって血管新生を亢進する細胞外に放出されるシグナル(PDGFやTGF-β)が腫瘍にもみられ、がんに随伴する間質には漏出したフィブリン塊が見られることも、謎となっている。がん発生とウイルス感染も関わる。

**3.9 病原菌
 ヒトや家畜にとって病原微生物による感染を知ろう。微生物の分類は、現在では、タンパク質を合成する酵素リボソームのrRNAで系統樹をつくり、界として真正細菌、古細菌、真核生物と区分される。細胞内でDNAが核膜に包まれているか否かで、原核細胞と真核細胞に大別されるが、rRNAのサブユニットが16Sと18S(Sは沈降速度Svedbergのこと)とも異なる。細菌(バクテリア)と言えば、通常は真正細菌のことを指し、原核細胞の大腸菌や枯草菌であり、細胞壁だけをもつマイコプラズマも含まれる。真核細胞の微生物には、カビや酵母、菌、藻などであり、真菌と呼ばれる。
 外界を隔てる細胞の外膜は重要である。原虫では殻をもつし、真菌もキチンなどの多糖の厚い壁を構成する。植物では細胞壁をもつが、動物では細胞膜だけである。グラム染色して(ペプチドグリカンなどの多糖のみの細胞壁を染色)、陽性と陰性に加え、その形状が球菌か桿菌を見分ける(図3-10)。グラム陰性は薄い膜であるので消毒薬などが効きやすい。グラム陽性は、ペニシリンなどの抗生物質によってペプチドグリカンの合成阻害の働きで溶菌する。抗生物質は、宿主の動物細胞には細胞壁がないことから、病原菌に選択毒性をもつ。ウイルスも同様にエンベロープ(外膜)が脂質であれば消毒できるが、タンパクのカプシドだと効果は低くなる。
 飢餓状態では化学シグナルを発して、融合したスラグ、塊を形成し、バイオフィルムとなり、内部に隠れて抗体などが攻撃できなくなったり、発現する遺伝子も変わったりと、免疫機構が効きにくくなるように振る舞う。真菌は、生きにくい環境では芽胞となり増殖を止め、子嚢や担子の胞子となり休眠状態を保つ。再び、増殖に適した環境になって、発芽して増殖を再開する。この特性のため、細菌の死の判定は難しい。
 食物では、食べたときに感染する場合と細菌が産生する毒素が原因となる場合がある。グラム陰性の外膜には毒素となるエンドトキシンが含まれるため、不活性化しただけでは不十分であり、除去されるか、毒素を無害化しなければならない。
 病原微生物を絶つ場合、「滅菌」といえば病原菌をゼロとすることであり、「消毒」や「殺菌」は病原菌を減らすことを称す。大別して、方法には化学物質や機械的除去、物理的作用が使われる。病原微生物の膜破壊を促す界面活性剤やハロゲンが使われたり、たんぱくを変性させ不活性化させること、熱や放射線のような照射をおこない核酸を破壊したり、代謝系に障害を来すような方法もある。高圧加熱殺菌はよく使われる方法であるが、毒素まで無毒化されない。機械的な除去では、吸着したり、濾過したり、病原菌を物理的に分離する。酸化剤(過酸化水素、オゾン、過酢酸など)を使った膜破壊や代謝系破壊、タンパク変性も効果的である。いずれにせよ、対象と滅菌作用を鑑みた方法で策を講じる必要がある。
 生体防御機構には、自然免疫として異物を排除したり、獲得免疫として抗原特異的な抗体を発現する機能があるため、ウイルスには免疫機構を働かせる、ワクチンとして宿主の免疫能を賦活化する方法がとられる。
 薬剤、抗生物質を使っていくと、いずれ耐性をもつ菌が出現する。近年、治療に抗生物質が乱用され、耐性菌を爆発的に増加させ、蔓延する状況は大変な問題である。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなワクチンでは治せない場合もある。このような状況に、新たな方法の感染防止策が必要であるだろう(World Health Organization, "Antimicrobial resistance", Apr. 2015)。
 
*4.プラズマ農業応用
 農業とは、土地を利用して有用な植物や動物を育成する産業のことである。広くは、農産加工や林業も含め、魚介類の捕獲や養殖に携わる漁業も対象とする。食品や繊維、原材料(生薬など)、また畜産では家畜化して動物を飼育して食肉、鶏卵、原材料(ウールなど)、漁業でも魚介類や海藻を生産する。そのため、生産性の増加や収穫物の価値の向上、農地・養殖場などの環境の持続可能性が望まれている。
 食物という観点では、世界的に飢餓状態、栄養不良で数億人規模で苦しんでいる。 食品生産量の統計は、世界規模で年間39億トン、日本国内でも2億トン程度が生産されている。生産された食物は、産地から流通され、販売されることで顧客に届けられている。しかしながら、実際の過程では、腐敗などにより3分の1が失われている(World Resource Institute, 2013)。その原因には、微生物の繁殖による腐敗があり、食品衛生上の変敗(図4-1)が挙げられる。そのため、食品鮮度が維持されれば、この無駄は削減されるので、安全な簡便な微生物の殺菌技術の確立が望まれている。
 将来的には人口爆発といわれる世界人口の推移で100億人に達する状況で、エネルギーと食糧問題は日々深刻化している。また、感染症は地球規模で顕在化しており、この感染には飲料水が媒介しているといわれている。そのため、水の殺菌で多くの人が助けられる。繰り返し、食糧生産、食品鮮度維持、飲料水殺菌などに、いつどこでも使用できるプラズマ技術の活用が期待して止まない。
 ここでは、殺菌と生長促進を例に挙げ、最近の成果を紹介する。

**4.1 殺菌:青果物の鮮度維持
 青果物の鮮度維持を向上させることに、汚染されるカビの不活性化が挙げられる。名城大学・伊藤らは、ミドリカビがプラズマで生成した酸素原子の照射で不活性化することを報告した[4:1]。ミドリカビは学名Penicillium digitatumと呼ばれ、温州ミカンに播種し繁殖して腐敗をおこす。
 この不活性化の作用機序には、カビの胞子に対して、物理的に膜の破壊を起こすのか、化学的に細胞膜などが酸化により障害を受けるのか、生体内の細胞内に致命的な影響を与えるのか、プラズマの作用が解明されていなかった。
 名古屋大学・橋爪らの研究から酸素原子を過剰に照射して不活性化した胞子の細胞では、胞子壁に物理的な損傷が見られずに細胞内オルガネラが酸化的崩壊していることが顕微鏡で観察された[4:2]。
この酸化過程を、さらに解明するため、胞子のフリーラジカル挙動に着目した。著者らはプラズマ照射中のフリーラジカルを電子スピン共鳴(ESR)法によって調べている(図4-2)。胞子は、休眠状態で濃い緑色を呈しており、発芽能力を有している。この胞子は、セミキノン様のラジカル信号(Q・)が検出される(図4-3)。キノンは電子伝達系を担う分子であり、酸化状態の分子の還元に有用である。
 次に、胞子に対してプラズマで生成した酸素原子(O 3P(3重項基底状態))を照射していくと、Q・信号は次第に弱くなり、過酸化ラジカル信号だけが残るように変化した。元のQ・信号の低下は、胞子の不活性化と関連している(図4-4)。つまり、休眠状態の胞子は、酸化ストレス抗力としてQ・の消去能による防御機構を働かせており、プラズマに由来する酸化ストレスが過剰に及ぼされ、化学的に損傷が胞子壁透過的に働いた結果と考えられた。
 他にも、プラズマの発する紫外線がDNA傷害を与えて、不活性化する機構など、青果物の鮮度維持については、多くの報告がある。しかしながら、もしDNA傷害がある場合には、それをヒトが摂取して、安全かどうかは今のところわかっていない。そのためにも、殺菌の作用機序については解明が望まれる。
 市場で売られる野菜、果物などはビニール袋に入れられているが、この袋毎、プラズマ処理する方法が、アイルランドDublinのMisra、Cullenらのグループなどによって開発されてきている[4:4]。薬剤に頼らない殺菌方法であることから魅力的である。食物の腐敗の原因は、微生物が汚染して毒素となる場合もあれば、自然と変敗が進んでいく場合もある。うまく酵素が働きタンパク質がアミノ酸に分解されれば「熟成」ともなり、今後は食品科学的な発展も望まれる。

**4.2 生長促進:酸化ストレス
 プラズマの農業応用については、静電気の利用にまで遡ると、18世紀には低木に電流を流して生長・開花や電極上に種子を置き発芽・生育の促進がみられたとの報告がある。最近では岩手大学・高木らが、担子菌(きのこなど)で子実体形成の促進、また種子や液肥、培地の雑菌不活性化に電気処理をおこない、効果的な結果が得られたことを報告している [4:5]。九州大学・白谷、林らのグループからもプラズマが、植物の生長を促進するという報告なされている[4:6]。多くの報告がなされる状況で、プラズマが一定の効果を与えることは間違えないだろう。しかしながら、その機構(の詳細)は未解明のままであり、農業として利用するには課題も抱えている。
 生体の死滅と生長といえば、相反することのように思われるが、細胞の応答という観点でみれば、別の見方ができよう。種子も胞子も、またクマムシやクマの冬眠でも、休眠中には、熱や紫外線、化学物質に対する高い耐久性をもって、代謝的に止まっている。そして、好条件の環境に戻ると再び動き出す。細胞は、刺激に対して恒常的に応答しており、帰還不能な傷害に達することで、その(生命)活動を終えてしまう。すなわち、酸化ストレスの刺激に対して、正常であれば抗酸化作用が働き、酸化ストレスは消去されるが、高ストレスともなると、障害となり、また死に至る。
 プラズマから生体には、酸化ストレスという形で刺激が与えられるとの見方ができる。既に、放射線医学においては、低線量での生物応答に対してホルミシスという言葉がある。薬物投与に対しても用量に対する生体反応は薬理作用と致死作用をもち、いずれもロジスティックやシグモイド曲線となる。低用量では無作用であり、抗体が抗原に反応すれば、薬効が得られる。抗原への効果が間接的に作用する場合には薬理作用にも限界が見られる。同様に、酸化ストレスを用量として見た時に、低い場合には細胞が順応するので、生長促進という形で顕れる可能性がある。しかしながら、この点に関しては科学的な根拠を積み上げが必要である。
 応用分野は広いにも関わらず限定的な紹介となってしまったが、青果物以外、土壌などなど、他にもプラズマと水との相互作用なども興味深い内容は多い。
 
*5.プラズマ医療応用
 医療応用における止血、遺伝子導入・組織再生、がん治療を例に挙げ、最近の成果を紹介する。

**5.1 マイルドプラズマ止血 [1]
 第一に、産総研・池原らによって進められている血液凝固技術がある。
 現在、外科手術の現場では高周波凝固装置が使われる(ことがある)。アルゴンプラズマ凝固装置とも呼ばれ、アーク放電により高温プラズマを生成し、組織の焼灼で、毛細血管を含む間質ごと加熱する。漏出性出血は止血され、病変組織を視認するための視野確保が容易になる。この止血方法では深部筋層まで影響は及ばないが、組織表面に炭化した熱傷層を形成し、器官組織は壊死し、炎症反応が引き起こされている。組織面の付着、癒着をもって治癒する。このような組織癒着は、痛みを伴ったり、二度目以降の手術で癒着剥離をしなければ患部に到達できず、問題が大きい。
 一方、低温プラズマをもちいた場合(マイルドプラズマとも呼ばれる)でも止血効果が見いだされた(図5-1)。組織表面の温度は、ほぼ体温であり、加熱の効果はない。一つに、プラズマによる血液凝固促進として自然凝固系で活性化するCa+の発生やNOの効果が原因との考えもあるが、現在では、池原らによって血漿ほかタンパク成分(アルブミンなど)が、プラズマの照射部に液状血液表面に凝集して凝固した膜を形成しながら止血する機構が有力視されている。この止血機構では、膜の形成で気中酸素との接触も遮断され、酸素由来に活性化する自然凝固系誘導の炎症反応が低減し、血液溶出した創傷部位の消炎が進むため、瘢痕を残さず、組織癒着も防がれる。

**5.2 プラズマ遺伝子導入 [5:2-4]
 第二に、東北大学・金子らおよび愛媛大学・神野らによって精力的に進められている遺伝子導入技術がある。
 現在では遺伝子導入方法は、1)電気穿孔(物理的)、2)薬剤(リポフェクチン)(化学的)、3)ウイルスベクター(生物学的)、の3種が一般的である。細胞は細胞膜に覆われており、細胞外から物質を導入するためには、何らかの方法で膜の内側にまで物質を届けられる手法でなければ実現しない。この操作が細胞傷害に度を超して及ぼせば、細胞死をもたらし逆効果である。
 物理的に膜に可逆的な穿孔をおこなう方法が電気穿孔法である。物理的に取り込ませるため、導入効率は高い値を示すが、逆に細胞の生存率が高くできない。ウイルスベクター法では宿主細胞膜に融合して、自身の遺伝子を細胞内に導入するため、遺伝子導入後の細胞の生死に大きく影響してしまう。必ずしも良い方向には進まないため、この方法も原理的に導入効率は高いが、細胞生存率は低い。細胞膜と同じないし、構成が近い物質の膜は、細胞膜に融合し、細胞内に捲れ拡がれる。これがエンドサイトーシスであり、この機能をもつ人工膜をリポフェクチンという薬剤が担っている。融合により導入されても細胞質に入るだけなので、細胞の生存率が高い。一方で導入率は高いとは言えない。
 そのため、導入効率が高く、細胞生存率が高い遺伝子導入方法が望まれている。このように新しい遺伝子導入が切望される中、プラズマを利用した遺伝子導入の試みが始められた。プラズマを照射する構造や条件を最適化された結果、現在かなりの導入効率と細胞生存率の両立がなされることがわかってきた。通常の細胞は、細胞外から養分を取り入れ、細胞内の不要分を排出するエンドサイトーシスや膜チャネルがあり、従来の細胞内物質導入機構に加え、プラズマが膜を穿孔する効果が、導入率と生存率を両立する条件をもたらしているといわれている。

**5.3 がん治療 [5:5-7]
 第三に、名古屋大学・堀、吉川、水野らによって進められているがん治療がある。
 低温プラズマを、細胞培養するシャーレに直接照射した場合、死滅してしまう領域と影響が及ばない領域があることが知られていた。接着細胞でありながら、浮遊してしまうことから細胞外マトリクスの破壊が原因と考えられていた。一方、死滅した細胞がアポトーシスで死滅しているという実験結果もえられていた[5:5]。プラズマが関与する影響を調べて行く上で、発展的に名古屋大学・田中らによって、細胞を取り除いた培養液にプラズマを間接照射した場合でも、がん細胞に選択的な死滅効果が報告された。この効果は、照射後8時間程度放置した溶液でもみられる結果が示されている。すなわち、プラズマ照射した培養液の抗腫瘍効果が持続し、8時間以上経つと自然と抗腫瘍効果が無力化することが分かっている[5:7]。
 さらに、名古屋大学・吉川らのグループでは、プラズマ照射した液体をPAM(Plasma activated mediumの略)と名付けて、ヒト卵巣がん(NOS2)を播種したマウスに皮下注射で28日間欠投与をおこない、腫瘍量の経時変化を調べた(図5-5)[5:6]。その結果、プラズマ照射しない液体投与群に対して有意に腫瘍量が小さくなっていた。また、細胞株には抗がん剤投与後に耐性を獲得した細胞(NOS2TR)にも同様の効果があることが示された(図5-5)。このことは、卵巣がんの外科手術摘出後に投与される抗がん剤の耐性株にも効く可能性を示しており、再発・転移の防止に効果をもつ意味で注目に値する。今後、適確な投与量が計算可能になれば、がん細胞特異的に作用するので腹腔内への注射などによる臨床適用される可能性も高い。
 富山大・近藤らはプラズマ照射される溶液には放射線の約200倍とも換算される酸化活性種(ROS)が発生されていることを報告した[5:8]。また、名古屋大学・豊國らはプラズマ照射による組織へのフリーラジカル生成を調べ、人為的に制御して酸化ストレスを細胞に与えられるツールとなりうることを報告した[5:9]。がんの発症についても、酸化ストレス由来で体内分子への変性を生じた結果、遺伝子異常などが起こることが原因と考えられるため[5:10]、プラズマを酸化ストレスと結びつけた研究が疾病の解明に繋がる可能性も大きい。
 現在では、世界的に研究が進んでいるが、脳腫瘍をはじめ皮膚がん、肺がん、胃がん、結腸がん等、多くのがんが治療対象として研究が進んでいる(図5-6)。
 
*6.今後の展望とまとめ
 プラズマの農業応用には、殺菌をはじめとして、生長促進や栄養価向上などをもたらす化学的・物理的な作用から生体に刺激を与えるツールになりつつある。刺激の中身が、光なのか、ラジカルなのか、電(磁)界なのか、またそれら強弱について、どのように理解していくのか、そして生体の応答がどうなるのか、プラズマと生体の相互作用について科学的に解明され、科学的な裏付けをもった応用が開発され、隆盛を築くことが望まれる。
 プラズマの医療応用についても、背景を考えておく必要があるだろう。疾病に対する医療行為の歴史には、古くは悪魔憑きや狐憑きといわれ、病人を探し出しては治療といえないような行為をおこなっていた時代もある。その後、臓器異常という概念から西洋医学への発展があり、対処療法の多くが確立されている。現代では、細胞異常の治療が可能であり、肝臓の異常でも肝硬変と肝臓がんを検出して診断する。
 健康状態と疾病は段階的であり、不可逆的に病的な構造の進行が臨床的に顕在化しなければ、治療の効果の判断は難しい。病的状態への介入は、診断に基づいた適切な治療が工学的におこなわれるべきなのである。すなわち、現在プラズマの応用は、技術的に開発に値する効果を示してきているが、その作用機序は解明されたとは言い難く、科学的な見識が不十分であり、プラズマと生体の反応のメカニズムの解明が喫緊必須である。この状況はバイオ応用全般に安全性の確保の面からもいえるであろう。
 今回、プラズマの農業応用や医療応用に絞って最近の研究成果を紹介した。プラズマエレクトロニクスの人にとって馴染みの薄い分野であると思われたので、なるべく原理に則った基礎知識についても説明するように配慮した。今後、ますます物理-化学-生物の境界線は無くなった融合領域の研究が進むことが予想される。20世紀が電子の発見から(プラズマもさることながら)、エレクトロニクス、情報通信のめざましい発展から、経済的な豊かさを人類にもたらした。21世紀の将来はわからないが、(DNAの発見ばかりではなく)遺伝情報の解明から、生命に係わる技術に驚嘆に値する展開が見込まれる。地球規模的な感染病、飢餓、飲料水、環境破壊などの深刻化する問題克服に向けて、プラズマの一助があることを願ってやまない。

*謝辞
 本原稿をまとめるにあたり、堀勝教授をはじめとして名古屋大学の工学研究科と医学研究科の関係者の先生方ならびに研究室各位、文科省科学研究費・新学術領域研究「プラズマ医療科学の創成」の関係者の先生方、名城大学プラズマバイオ科学研究センターの先生方、ほか多数の方に感謝の意を表す。

 
*参照文献
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参考文献 内容を紹介していないが、参考になる最近の報告を挙げておく。
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〇医療応用
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[5:25] B. Haertel et al. Biomol. Therapeutics 22 (2014) 477. 

参考 以下の教科書群は理解の助けになる。本格的に学ぶ際、精読に値する。
〇がんについて
・Kumar「ロビンス基礎病理学」第9版 豊國伸哉ら訳(丸善、2014)
・DeVita「がんの分子生物学」(MED SI、2012)
〇生命科学について
・Alberts「細胞の分子生物学」中村桂子ら訳(ニュートン、2010)
・Reeceら「キャンベル生物学」第9版(丸善、2013)
・NHK高校講座「生物基礎」
〇物理生物学について
・Phillips「細胞の物理生物学」笹井理生ら訳(共立出版、2011)
・Atkins「生命科学のための物理化学」(東京化学同人、2014)
〇生化学について
・Voet「ヴォート生化学」上下巻(東京化学同人、2012)
・Berg「ストライヤー生化学」(東京化学同人、2013)
〇微生物 学について
・Strelkauskas「微生物 学 基礎から臨床へのアプローチ」(MED SI, 2012)

(c) Kenji Ishikawa