エッチングの高度化と3次元構造の作製技術
第1章 加工技術の基礎と高度化
第3節 ドライエッチングの基礎と高度化
石川健治 名古屋大学
1959年にリチャード・ファインマンが「There’s plenty of room at the bottom」と講演し、ナノメータスケールの世界では個々の原子を直接操作するなど、人類の未踏領域が広がっていることを指摘した [2]。その後、米国主導のナノテクノロジーブームが起こり、1981年には走査トンネル顕微鏡が発明され、Si表面の原子像が観察された [3]。1991年にはH終端Si(111)面の原子平坦面 [4] を目の当たりにして、原子・分子スケールでの3次元構造物の操作が期待されるようになった。
大量生産性に焦点を置くと、フォトリソグラフィによるパターン転写技術が唯一の手段である。マスターとなるフォトマスクを元に露光技術で大量複製するレジストマスクを使った手法は、フォトリソグラフィの作製するパターン寸法に限界を向かえた。
2010年後半からは、フォトリソグラフィのパターンを元に、そのパターン構造の側壁に均一に薄膜を堆積して、その厚さがパターン寸法となるような手法がとられる。レジストマスクの寸法は、このサイドウォールイメージ転写などのマルチプルパターニング技術が登場し、均一性堆積と異方性エッチングで微細化されている [5]。
このように、加工形状の3次元構造とスケールに関する技術は日進月歩で進化している。
●材料選択比
ロジック半導体では、微細化によって得られる低消費電力化という性能が必須であるから、これからも素子構造の3次元化を伴いながら、回路レベルでの微細化は技術発展に不可欠である。その実現を支えるエッチングプロセスでは、加工時に露出する材料ごとの選択比の制御が重要であり、加工したい材料だけにエッチング反応する技術の構築が鍵となる。
●高アスペクト比
メモリ半導体ではコスト競争が激しく、積層の3次元化が進んでいる。高アスペクト比を持つ構造のエッチング加工が引き続き重要であり、高アスペクト比による課題の解決が避けられない状況である。
●難エッチング材料加工
基本素子の多様化が進んでおり、3次元構造を制御してデバイスを製造する要求が増している。例えば、量子コンピュータの作製などでは、微細化とは別に考えられていた材料を微細に加工する必要がでてくる。すなわち、難エッチング加工材料への技術開発が必要である。
化合物に含まれる元素が多くなると、選択エッチング現象により難エッチング性の元素が偏析して残留するなどの困難が生じる。遷移金属の元素では、従来のエッチングケミストリで揮発する反応生成物を形成しにくいため、困難であった。このような課題を克服するエッチング技術についても技術革新の余地がある。
●プロセスの計測や制御
エッチングプロセスは、被加工面から材料を除去するため、やり直しがきかない。フォトリソや成膜では、プロセス後の検査で失敗を確認し、再生することが可能な場合もあるが、エッチングではほぼ再生は不可能である。
したがって、プロセス中の装置状況をセンサーでモニターし、リアルタイムで制御する技術が重要である。プラズマプロセスと表面反応の複雑性により、実用的なリアルタイムプロセス制御技術はまだ現実にはなっていないが、機械学習や人工知能の技術発展を取り入れながら、制御性の向上について議論の余地がある。
図 プラズマエッチングに求められる技術発展の方向性
このような内容について、本節では取り上げる。
当時日電アネルバの細川氏が報告し、反応性イオンエッチングなどと呼ばれる [8]。CF4のプラズマからCF3イオンを1keVのエネルギーに加速させてSiO2表面に照射されると、CF3イオンあたりSiO2分子を1.5倍で除去するほど、促進される [9]。Arイオンであれば、一つのイオンあたり0.3程度(スパッタ収率とも呼ぶ)で除去できるのが最大であるから、このような単純比較でも5倍ぐらい効率化することを示している。
スパッタリング現象ということからも、イオンの照射エネルギー依存性を示す。数keVまではエッチング反応を促進し、10keVレベルに近づくとイオンは固体中に注入される効果が支配的になることに移行する。すなわち、化学的な変性を受けながら、イオンの加速を使って運動量が表面に伝達されることで、揮発性の反応生成物をつくることがポイントである。
マスクの形状が完全な垂直でない場合、マスクの側壁に当たったイオンは反射し、構造内部の側壁に照射される。結果として断面が弓なりの形状を呈し、ボーイングと呼ばれる現象が発生する。これを防ぐためには、マスクの形状制御や内部側壁部の保護効果の制御が必要である。しかし、側壁保護が強すぎると先細りの断面形状(テーパー形状)となる [10]。
チャージしたイオンはマスクで影になっていても直進して構造内部に到達するが、負のチャージを持つ電子は構造のプラズマに近い部分にしか到達できない。この結果、チャージのバランスが崩れ、チャージアップが生じ、構造内で発生した電場でイオンの軌道が変わり、イオンが垂直に輸送されることが妨げられる。これにより断面は歪んだ形状となり、うねるようなツイスティングや、曲がっていくノッチングなどの形状異常が発生する。
紙面の都合上、十分な基礎的内容を説明できないが、次の節でも基礎的な説明を盛り込みながら、現在開発が進められている課題と今後の技術展開について説明する。
次に、絶縁膜を成膜してから下層の電極部分に接続するためのプラグやコンタクト、ビアというような貫通電極を設けるためにエッチング加工で打ち貫く工程の微細化が進んだ。この場合には、絶縁膜をSiO2として、下地の電極部がSiだとすると、SiO2をSiに対して高選択にエッチングする技術が必要になる。さらに、素子の寸法を詰めていくと、パターン側の位置ズレに対しても、材料選択比が効いてくる。導通をしたい電極部に接続する領域と、すぐ隣に置かれる絶縁して配置する電極に絶縁膜を覆っておき、この絶縁膜は削らないように自己整合的に電極領域をオープンする工程を使う。この工程をセルフアラインメント、セルフコンタクト技術と呼ぶ。最近の工程では、より複雑に材料選択比を使って、削りたいところだけをエッチングしていく工程が使用される。この段落はじめで説明したSiO2の選択エッチングには フルオロカーボンガスのプラズマエッチングが使用され、SiO2から酸素含有の少ない材料に変化したところで、急にフルオロカーボンのポリマー膜が堆積するような原理でSiに対してSiO2を選択的にエッチング除去する。
材料選択比は、材料表面の特性を取り入れるようにガスプラズマから反応面に入射する反応活性種量を制御して、その活性種の堆積とエッチング反応による材料除去のバランス差を取り、削れる材料と堆積が起きる材料の対比を作り出している。当然、レジストマスクに対して、マスク露出部の材料を削っていくというプロセスが基本にあるが、高アスペクト比構造を形成する場合には、マスクの厚さに対して加工深さの方が大きいことが当然として求められる。フルオロカーボンがSi上で堆積してエッチング停止する条件であって、SiO2にはエッチング促進している条件を設定することで、材料のエッチング選択比が得られる。このような原理に基づき、現在の最先端の加工では、拡張的に堆積とエッチングのバランスを制御した材料選択比をもつプロセス条件が使われている。
今後材料の加工寸法が微細化されるほど、要求される材料選択比の要求値も挙がっていくだろう。なぜなら、原子層のプロセスであれば、1原子でも削れてしまえば膜がなくなってしまうため、極限の材料選択比が求められることになる。材料選択比の追及はプロセスマージンに繋がり、生産性と量産性の確保のためには最重要な技術である。
セルフアラインメントは、絶縁保護している部分、サイドウォールなどと呼ばれる箇所に到達すると、このサイドウォールの肩部分が削れ落ちる、肩落ちが問題となる。大抵、深さ方向に垂直異方性で高エネルギーのイオンを使って、削ってきてるためスパッタ的に除去する効果が大きく、サイドウォール肩部分の斜め入射イオンの効果で削れやすくなってしまう。そのために、サイドウォール材料に対しても選択性のあるプロセスで、イオン効果の少ない条件に移行して、この部分の3次元形状の制御が行われている。
ほかのHigh-k材料となるHfO2やGaN化合物では技術的に難易度が上がってくる。Siの代わりとなる金属元素の揮発性がハロゲン化を使っても容易に得られなくことに起因する。また、金属元素を複数含む、LaHfO2やAlGaNになれば、さらに異なる異なる金属元素のもつ揮発性の特性の違いが際立ってしまい、同時に除去したい元素の間で優先エッチングを生じてしまう問題が発生する。
古くからGaAsでも周期律表の右列に位置する元素ほど揮発性を得られる反応生成物を得やすいために、周期律左列の元素が残留することなどを生じる。反応生成物の形成はプラズマのイオンやラジカルの反応性が支配的であれば、基板温度の影響を受けにくいものであるが、生じた反応生成物の表面からの離脱は表面温度に依存する。一方で、ラジカルの吸着性は表面温度に反比例する。その一例には、GaNを塩素でエッチングする場合、GaCl3の揮発性は室温では乏しいにもかかわらず、N2やNCl3はガスであるため、何も工夫をしなければGaの方が表面に残留してしまう。基板温度を400℃程度にまで昇温しておくと、GaCl3の揮発は優勢になり、GaとNの元素構成比(ストイキオメトリ)を保ったままエッチングを進行させることができる [11]。
ここまでに選択エッチングの実現性の原理について述べてきた。またプロセスマージンという観点からすれば、生産性や量産性を得るために本質的な要求事項であることに間違えがない。
具体的な方法では、例えば シリコン窒化物にイオン照射するとボイドの占める割合が高い状態になる。この状態でフッ素などを曝すと、照射で化学結合性が弱くなった部分に優先的にフッ素反応を生じるので、変質層をレイヤーごとにエッチングすることができる [13]。
先にシリコンを塩素ラジカルに曝しておきハロゲン化した層を形成してからイオン照射を行うと、ハロゲン化された変質層を選択的に除去するようなエッチングができる。他にも、配位子置換の例ではアルミ酸化物をHFでフッ化層を形成しておき、スズフッ化物で処理すると、3価のアルミフッ化物から4価のスズフッ化物に配位子の置換を起こして、アルミフッ化物を離脱させるという方法になる [14]。この配位子はフッ素原子であるが、メチル基などのアルキル基でも配位子の交換を行うことができ、これはトランスアルキレーションなどとも呼ばれる。
以上のことは、除去したい膜の構成元素に配位子を結合させ、より安定な分子の形成をおこなうと、分子は表面からエネルギーを付与されれば、離脱できるという原理に基づいている。基本的なところに戻って平易に説明すれば、Siを中心金属に、その結合手をFと飽和結合する状態でSiF4となり、安定な分子の形成は表面原子と物理吸着する状態になるので、脱離エネルギーを付与されれば離脱する状態である。より広い見方では、このFの結合は中心金属元素への配位子とみることもできる。したがって、F以外でも中心金属元素に配位して、分子を構成できれば、エッチングができるはずである。特に、遷移金属では3d電子や4f電子をもっているので、その電子を完全に覆い隠すように配位子を結合させて、離脱できるほど安定な分子を作らないとエッチングできないことを意味している。このように見れば、化学気相堆積(CVD)法で使用される有機金属プレカーサの分子設計の逆反応で表面からプレカーサと同じような分子を合成できれば良い。ただし、述べているように、その分子の安定性への考え方は必ずしも逆にはならない。つまり、堆積プレカーサであれば、表面で吸着して不安定になる方が良いので、共有結合するような安定な分子よりも配位結合や非対称な分子が好まれる。エッチングでは、元素を遊離させて、配位子を結合させながら不安定な状態では、必ずしも脱離にとって望ましくない。脱離と分解が競合してしまうからであり、このような状況をみれば、エッチング反応では、まず脱離ターゲットの元素を遊離させることがプロセスとして必要であり、次に配位子を結合させること、そして、その錯体を脱離させることである。
今後、パターン寸法の微細化とエッチング量の精密制御という観点で、材料選択性というキーワードを中心に、次世代型原子層エッチングの開発指針についてわかるように述べてきたつもりである。目標として原子1層ごとの制御になるため、オングストロームごとに除去して数十ナノメータレベルで除去するため、それを可能にするために選択比で100以上を実現する技術が望まれている。また、表面に露出する材料の種類も、2つや3つでなく、それ以上であっても選択エッチングを実現することが望まれている。
高アスペクト比のエッチングになると、問題になることはアスペクト比依存である。構造の入り口を形成しているときは、低アスペクト比になっており、次第にそのアスペクトが増し、高アスペクト比構造が形成され、その比が50、100では全くエッチングができないことが起きることがある。Siのボッシュ法では、基板を低温して、サイクルの切り替え時間を犠牲にすれば、記録的にはアスペクト比が200でもエッチングができている [10]。しかしながら、アスペクト比が違うところで同じようにエッチングできるのかと言えば、それを克服することは難しい、むしろ不可能であるともいえる。
アスペクト比依存のエッチングを生じる要因には、エッチャントが間口から拡散で侵入するためアスペクト比が上がるとガスのコンダクタンスで、ガスの置換時間はアスペクト比依存を示してしまう。イオンについても、構造方向に入射角度分布があると、シャドーイングを生じてしまうため、角度分散で側壁にあたる成分によって、やはりアスペクト比が10以上と非常に大きくなれば、本質的にこの問題から逃げられない。究極的にイオン入射で角度分散がなければ、この問題からは解放される。ただし、既に今でも取り組みはされていて、それ以上に解決していけるのかというと、簡単に実現されるかも定かではなく、とても難しい問題である。
イオンの入射角度分布は、イオンの熱速度で分散する水平方向の移動に対して、シース加速されて垂直方向に移動する速度が、どれほど高くなるかによって、決まってくる。300K でも熱速度は約500m/s(窒素分子)であり、1kV掛けたイオンの速度では約70㎞/s(アルゴン)にまでなっているが、それでも数度の角度の広がりになっている。この時、シャドーイングはやはりアスペクト比が50、100にもなると影響するため、深い領域でイオンの到達フラックスは低下している。そこで、現在の対処方法は数10kVレベルにまでイオンを加速することである。さらに、絶縁膜では正イオンの照射で、高アスペクト比構造内のチャージアップがあり、負の電子などチャージ緩和もセットでかんがえていかなければならない。このようなチャージアップもあるので、10kVレベルに加速してもアスペクト比依存がなくなるわけではない。
反応性イオンエッチングの原理では、反応面へのイオン照射によるエネルギー付与とラジカルによる化学反応の促進があるため、化学反応を促進するラジカルのアスペクト比依存を改善する必要もある。本来反応性の高い粒子であれば、表面吸着して反応するため、高アスペクト比構造の内部にまで反応せずに到達するというのは矛盾を孕んでいる。また逆説的であるが反応しないものほど、高アスペクト比構造の内部への浸達があるということになる。すなわち、そこそこ吸着も反応も高いラジカルを理想的には活用したい。しかしながら、そんなに都合の良いラジカルがあるわけでもない。
そこで、最近注目されているのはHFなどである [15]。安定でSiO2、SiNに反応性があるので、高アスペクト比構造の内部で反応のキーになる。また、表面に吸着してから表面を拡散する場合には、むしろ高アスペクト比構造の内部の表面比率が大きいことで到達フラックスが有利となるとも想定できる。
同様にしてSiの高アスペクト比構造のエッチングを高速にするための方法を考えていかなければならない。
アモルファスカーボンの高アスペクト比構造のエッチングも活性種の輸送と側壁の反応の制御を考えて進められる [16]。側壁の保護をするということで、堆積種を使っていく、この状況で、エッチングの進行面でも堆積の影響が出てきて、その影響はアスペクト比に依存している。そのため、アスペクト比に最適な堆積種の添加具合などを制御できる方法があれば、有効に働くだろう。またアスペクト比に応じてという意味では、吸着確率の異なるラジカルを供給していくことで、高アスペクト比構造の内部に輸送されやすいラジカルにプロセス進行中に変化したり、高アスペクト比構造にいくほど、供給の待ち時間を変調するなどが必要である。
一方で基板温度を下げた方が、ラジカルの吸着が持続したままになるので、垂直異方性にエッチングしたい場合には、側壁の自発的なエッチングが抑制される。SiではF原子との反応は室温では自発的に進み、主要な生成物であるSiF4の沸点が-94.8度ということからも、基板温度を極低温にまで冷却すると、側壁の自発エッチングが抑制される。これは、クライオエッチングと言われる。SiO2ではハイドロフルオロカーボンガスのプラズマを使用すると、HFの形成があり、HFの凝集からSiO2が削れるようになり、-60℃の低温ほどエッチングレートが上がるという現象も発見されている [17]。この現象は最近実用化され、SiO2のエッチングレートを高速に、3次元形状の制御性を上げることに役立てられている。総じて言えば、基板温度の設定は重要な因子となってきていて、材料選択比という観点からむしろ、幾何学的な垂直異方性の加工面と3次元構造の側壁面との選択性の制御性という観点である。
ここでは高アスペクト比という方向性について述べてきた。この課題への具体的な解決方法は述べていないが、アスペクト比依存に適合するようなガス分子をデザインして、アスペクト比の進展に合わせたモニタリングからフィードバックする精密なラジカル組成の制御などが必要になってくるだろう [18]。パルス放電やバイアスのパラメータなど、多くの制御因子が使えることに加えて、ガス分子のデザインから活性種組成を制御することが求められてくるだろう。
遷移金属の加工は磁性体材料で多く、ハロゲンなどを使った方法では、磁気特性が劣化するなどの弊害もあって、スパッタリングエッチングの技術が使われている。前述するような揮発性の化合物をつくる表面反応を期待しても完全にストイキオメトリな反応がおこらずにダメージとして残留することが原因である。
難エッチング材料の加工には段階的な発展が試みられており、加工した時に使用する主に材料的な特性から材料の加工が求められており、形状ではなく性状の制御が第一優先であった。これが、難エッチング材料を性状よりもむしろ形状を所望の加工をして使用したいという要求も出てくるようになった。これまで難題であったダメージをもたらしてしまっていても形状を制御できればいい為、比較的エッチング工程に求められる要求の難易度が下げられる。次に、形状が制御できてからダメージ抑制と言った性状の制御へに発展する様子がみられており、技術開発に力が入れてこられなかった難エッチング材料の加工技術についても開発がされている現状ではないか。
上述してきたように、ドライエッチングの原理では、気相から反応の前駆体を供給し、表面で揮発性の反応生成物を生じる過程が必要である。この過程を精密に制御できれば、これまで難題であった対象の材料のエッチング技術も開発がうまくいくに違いない。
エッチングプロセスのその場観察には、分光偏光解析や赤外分光などの光学的評価手法が有効である。プラズマの生成に関するモニタリングも実施でき、プラズマの発光スペクトルを実時間で取得し、レーザー計測や質量分析でプラズマ中のイオンやラジカルの組成を分析することが重要である。状態の時間変化や空間分布を調べることで、多くのデータを取得できる。最近では計算機の能力が向上し、ビッグデータ的にデータ解析が進められる。
プラズマプロセスでは、機能性材料へのプロセスダメージが問題となる。解決にはプラズマプロセスの原理・原則から理解した対策が重要である。ダメージの定義は材料やデバイスの求める性質によって異なる。ダメージの現れ方についても議論が必要である。
最適な条件がプロセスとして設定されれば、制御手法が取られる。プラズマプロセスは複雑であり、制御手法も単純なものから複雑なものまで広範囲にわたる。最近では機械学習の進展により、制御の観点でもパラダイムシフトが起こりつつある。多くの技術者が取り組んでいる。
プロセス制御には、統計的プロセス制御や高度プロセス制御がある。これらはモデルや予測方法に依存しており、最適な制御パラメータを選ぶために仮想シミュレーションが役立つ。歴史的にプロセス結果についてのデータを蓄積し、その統計的な傾向を使うことでプロセスを制御する段階があった。これは、統計的プロセス制御ということでSPC(Statistical process control)とも呼ばれる。それが、何かの方程式を仮定して、プロセス制御パラメータに対して予測できるようになると、事前に制御パラメータを変えることができるようになり、これはAPC(Advanced process control)とも呼ばれる。これは、直前のプロセスで狙い値から実測値のズレを評価した時に、そのズレの要因を再現できるモデル構築から、それを直すような制御パラメータでプロセス制御することともいえる。これを突き詰めると、ロットごとに評価をして、その後にするロットの条件にフィードバックすることも可能になり、これはLot-by-lotとかlot-to-lotとか言われ、ロットではなく、ウェハごとや、ある一連のレシピを実行するごとに制御する場合にはRun-by-run(RbR),とかRun-to-run(R2R)制御といわれる。この先に、プロセス中のリアルタイム制御ということになる。一方で、これらの制御は、モデルや予測の方法に依存しているため、非常に膨大な数のプロセス制御パラメータの中から、どのようなパラメータを制御していくのかを最適にする場合には、これらのパラメータを実装置で得られることと同時に、仮想的なシミュレーションの世界で架空の装置を作り上げると役に立つ。気象予報のように、実測データを基にシミュレーションで未来事象を予測する。インフォマティクスの進展により、このような将来が現実に近づいている。基礎的な計測データのデータベース構築や原理的な説明モデルの開発が必要である。
今後も、機械学習や人工知能の技術を取り入れながら、リアルタイムでのプロセス制御技術の向上が期待される。これにより、より精密で効率的なエッチングプロセスが実現し、半導体技術のさらなる発展に寄与することが期待される。技術者や研究者は、これらの挑戦に対して継続的に取り組み、未来の半導体製造技術を支えていくことが求められる。
参考文献
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