Book07

『精密加工・微細構造の形成技術』

第2節[2] ArFフォトレジストのプラズマエッチング技術

1.はじめに

 微細加工はフォトリソグラフィーとプラズマエッチングの両者の技術革新によって進められてきた.このような材料の微細加工プロセスには「寸法・形状といった物理的性質」に加え,「材質・欠陥といった化学的性質」を制御しなければならない.まず,加工寸法の微細化には,フォトリソグラフィーで作製されるマスクパターンが高精細化され,ならびにそのパターンをプラズマエッチング技術によって下地材料に垂直加工され転写が施されなければ実現しない.実際,現在の加工寸法制御はナノメータのレベルに既に達しており,今後はサブナノメータ制御される加工技術への進展が必須となってきている.
 ここでは,マスクパターンの転写技術であるプラズマエッチングに絞って説明する.多くの問題に直面するが,その解決には実プラズマプロセスで生じている現象を原理まで遡ることが肝要である.プラズマと表面の相互作用を理解するには,プラズマからイオン・ラジカル・フォトンといったさまざまな粒子が複雑な相互作用をもって固体材料表面に照射され,それによって引き起こされる表面反応の機構解明が欠かせない.
 本節の構成は,ArFレジストの材料の特徴,レジスト材料のエッチング耐性,プラズマエッチング加工寸法ばらつき,そのばらつき発生とレジスト凹凸形成メカニズムとしている.特に,物理的・化学的双方が複雑に関与してレジストの変性・変質を議論するには,イオン遮蔽板・遮光板やイオンビームなどを活用して,粒子個別の作用とお互いの相乗効果を調べていくことが重要である.

2.ArFレジスト材料 [1]

 パターンの解像度は露光波長に依存しているため,パターン寸法の微細化のために短波長化が進んできた.光化学反応を利用したフォトレジストは,はじめ水銀ランプのg線(428nm)やi線(365nm)に対応して,分子量が1000~10000程度のノボラック樹脂と,感光基としてジアゾナフトキノン(DNQ)の誘導体が添加され,このC=N官能基が感光してNを脱離してケテンとなり,水分によってカルボン酸を構成して,アルカリ可溶成分を構成することで現像されるようなものであった.
 時を経て現在ではエキシマレーザーが利用され, Kr + F2* → KrF + 248nmやAr + F2* → ArF + 193nm, F2* → F2 + 157nmなどのエキシマ過程をもってレーザー発振される波長がもちいられている.現在, ArFの193nmの波長が主流となっていて,この波長域を使うレジストには,透明性と感光性の両立の要求を満たすため,化学増幅型レジストとなっている.これはトリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸などの酸発生剤(PAG)を添加して,感光部に酸発生をしてから,引き続くポスト露光ベーク(PEB)によって,この酸をレジンと反応させることで可溶性の酸に変化させて現像が進むようにするレジストである.分子量に応じて概ね数分子のポリマーが集合することで3~5nmの球状となっていて, 30nm幅のパターンになると,たった6~10が集まって構成していると考えて良い.
 レジストのエッチング耐性を考えれば,共役C=Cを含んだ材料の方が望ましいが,C=Cの紫外線吸収が強すぎるために,透明性の確保の点から,KrFレジストはポリヒドロキシスチレン(PHS,PHOST),ポリ(t-ブトキシカルボニルオキシスチレン)(t-BOC),ポリビニールフェノール系を主成分とするようになり,さらにArFではポリアクリル酸などがベースのレジンとして利用されている.これらに加え,必ずしも露光に係わる官能基だけではなく,基板への密着基や耐エッチングを上げ,解像度も上げる役割の官能基が含まれてレジストは構成されている.例えばヒドロキシスチレンは密着性基としても働き,メタクリル酸ではアルカリ酸が高溶解度なために耐性を上げるδ-バレロラクトン,γ-ブチロラクトン,メバロニックラクトンなどのラクトン環が導入されることも多い.ラクトン(環状エステル)やアダマンタンなどといった分子基を利用しているが,ラクトンは現像後の溶解性を高め,酸素を含んでいるにも関わらずエッチング耐性が高く,極性基としてアダマンタン構造をとりいれてアルカリ(現像液)可溶性を高めるなどの配慮がなされている.

3.プラズマエッチングの原理 [2]

 エッチング耐性を述べる前に簡単にエッチングの原理について触れておく.
 プラズマとその接した表面との間には,プラズマがデバイ遮蔽され維持されるようにイオンシースが自己整合的に形成され,プラズマ側が正にポテンシャルされる.すなわち,表面は負にバイアスされる状態となり,このシース電界で加速されて正イオンが表面に入射している.通常のエッチングプラズマ(プラズマ密度1011cm-3,電子温度:数eV)の場合,シース厚さ(数100μmから数mm)をもってウェハ表面に沿って形成されている.このスケールは微細なバターン寸法に比べれば,十分大きくマクロに見て表面に垂直に入射している.このとき,ガスの平均自由行程(数Paでcmからmm)に対して,このシース厚さが十分薄いので,背景のガスにほとんど衝突されることなくイオンはシース中で加速され,バイアスポテンシャル分のエネルギーをもって表面に垂直に入射する.このため,理想的には,レジストマスクが覆っていない露出部分でのイオン照射で促進されるエッチング反応を生じることとなる.
 高エネルギー粒子が入射して生じる表面反応には,物理的な弾きとばしとなるスパッタリング現象がある.一方,自発的に化学反応を生じて揮発性反応生成物を生成する化学エッチング作用もイオン照射に係わらず存在する.これらの中間に,表面には保護膜を形成し,加工側壁を保護しながら底部はイオン照射によって保護膜除去しながら進行させる化学スパッタ,イオン入射面で化学選択的な脱離物形成を生じさせる反応性イオンエッチングなどの反応に大別される.(図1)

図1 エッチングの原理

 レジスト表面ではエッチング反応が生じにくいように工夫がなされるものの,プラズマからイオン,電子,ラジカルおよび光は,レジスト表面に曝されることになるので,レジストの後退(消耗,エッチング),変形してしまうことが問題となる.また,化学選択的な被加工材料(レジスト以外)との反応を促進するために,フッ素や塩素,臭素などのハロゲン含有のガスがよく使われる.

4.耐エッチング性

 レジストのエッチング耐性については,経験的な指標として,レジスト材料中の炭素数に応じて上がること,さらに共役二重結合(芳香族系)材料が脂肪族系材料に比べて高いということが知られてきた.この傾向は,必ずしもガラス転移温度と相関はなく,レジスト材料中の全原子数(Nt)に対する炭素原子数(NC)から酸素原子数(NO)の差の比率を大西パラメータと呼び,この比率が高いほどレジストのエッチング耐性が高い傾向にある.また,全分子量に対する芳香族系炭素数が増えることでエッチレートが下がり,芳香族系(共役C=C)では複数の炭素結合を切断しなければ脱離種を生成できないことが理由と考えられている.この度合いを主鎖切断因子(G scission value)に表し,レジストのエッチレートが説明された.[3]
 前述の通り,ArFレジストでは,紫外線吸収の観点からC=Cを含まず,環状エステル(ラクトン)やポリアクリル酸(MMA)といった酸素原子を含む官能基を含有するため,必然的にエッチング耐性が低いことが,定性的に説明できる.しかしながら,プラズマエッチングの詳細を見ていけば,必ずしもそれほど単純ではないことは明白である.例えば,フルオロカーボンプラズマの場合には,表面にフルオロカーボン膜が堆積するために,必ずしもレジストの材料組成だけに依存したエッチレートとなるわけではない.このため,実際のレジスト材料における,プラズマから入射する粒子との相互作用を理解していかなければならない.

5.ArFフォトレジスト表面のエッチングプラズマとの相互作用

 エッチングの目的はレジストにリソグラフィック技術で形成されたパターンを下地材料に転写する加工に他ならない.特にArFレジスト材料では露光解像を優先して,エッチング耐性に犠牲を払っているため,プラズマプロセス中のレジスト変形が加工ばらつきとなって顕れることが課題となっている.加工ばらつきには,パターン寸法変化やラインエッジラフネス,ストライエーション(縞模様)などが挙げられる.すなわち,エッチングプロセス中にレジストは,どのように変性・変質してしまうのか?が疑問である.
 エッチング時のレジスト表面反応の評価方法には,1)活性種を個別にビーム状で照射した場合の試料を解析していく方法(ビーム解析)と,2)実プラズマに遮光板と透過窓を配置したパレット評価(PAPE)をもちいることができる.(図2)このPAPEと呼ばれる方法では,遮光板によってプラズマ光とイオンを排除して空隙に拡散してくるラジカルの影響を調べたり,透過窓を配置してプラズマ光だけの影響,またこの窓の間に空隙を配してプラズマ光とラジカルの影響を観察することが可能となっている.[4] 評価結果については後述する.

図2 遮光板(Si)と透過窓(MgF2)をもちいた表面反応評価方法(PAPE)

6.レジストの変性・変質要因

 リソグラフィー後のレジスト変形が,パターン寸法にバラツキを与えてしまう要因として,レジストの表面ラフネスの影響について考えてみたい.まず,レジストの変性・変質原因を挙げてみる.

6-1.ボンド切断効果

 プラズマプロセスでは,窓を隔てることなくプラズマ発光が照射されるので,真空紫外域に及ぶ高エネルギーなフォトンにも曝されてしまう.ArFレジストではエッチング耐性をもたせるためにラクトン基が導入されたりしているが,それでもプラズマ光によってこの官能基は分解してしまうことがわかっている.ラクトン基などのC=OやC-O-Cが脱離していくとレジストの粘度が下がり,ガラス転移が下がることが一般的に生じるため,レジストの変性は,この粘性が下がることにより表面平滑になると考えられている.[5]

6-2.表面硬化層形成

 エッチング時にはイオンが表面に照射され,酸素や水素の優先的な脱離が促され,表面の炭素比率を上げる結果をもたらす.化学的に作用しない希ガスイオンを照射した場合に表面伝導率が上がるようなグラファイト化が進行する.このような現象は多くの有機物で見られており,イオン衝撃によってボンド切断を生じた場合に水素が優勢に脱離するからであると解釈される.[5] 一方でドイツのvon Keudellらのグループでは水素照射では,水素化が生じてエッチ収率が上がる柔らかくポリマー化の進んだ膜(クロスリンク層)を形成し,必ずしも水素の脱離が優勢にはならず,グラファイト化に到るとは限らないと報告している.[6] フランスのParagonらはHBrプラズマにレジストを曝すと,Brに由来する輝線(157.5, 163.3nm)の真空紫外線の照射によってグラファイト化が進行して,レジストが硬化したり,ボンド切断された活性な部位がクロスリンク(重合)した結果と解釈された.[7,8] 他にもCOSとdc重畳したCCP装置でキュアした場合に,表面に硫黄Sが導入されるという内容[9]や,炭素含有イオンが照射した場合の方が炭素の入射によりグラファイト化の進行が早まるとの報告もある.

6-3.局所ハロゲン化効果

 気相中のフッ素濃度が上がるほど,レジストがフッ素によりエッチングされることで密度低下を生じたり,ハロゲン化でイオン照射によるエッチングが促進される影響がある.フッ素のスカベンジがなされる他のハロゲン臭素や沃素を付加したガスの使用は効果的に働くことが多い.一方で,これら他のハロゲンが直接レジストに作用してレジストのエッチングを防ぐという考えもある.

6-4.局所エッチ収率変性効果

 フルオロカーボンプラズマ中ではフルオロカーボン膜が覆っているが,これがイオン照射によって部分剥がれることで,表面の層に変化が加わり,凹凸が増してくるという報告がなされている.この効果はイオンエネルギーが上がるほど,またウェハ温度があがるほど顕著になる.これはイオンのエネルギーが高い方が,一度の照射によって変化を及ぼす領域が大きくなることや,温度が上がることでフルオロカーボン膜の堆積が少なくなる.

6-5.表面ラフネスの既往文献報告

 米国のOehrleinやGravesらによってレビューがまとめられており,プラズマによるレジスト表面ラフネスの形成には,プラズマの発する真空紫外光が100nmレベルの厚さ領域でレジストのC=O切断による軟化をもたらし,最表面数nmにはイオン照射によって高密度なグラファイト層が形成されるとの考えがある.このようなボンド切断とクロスリンク硬化の2層構造形成と,このような2層構造に機械的な粘弾性応力の緩和機構が働き,弾性バックリング変形を生じた結果が表面凹凸の形成という説明がなされた.この考えに基づき,機械応力理論によって凹凸周期や振幅の説明が報告されている.[10]
 また,ラフネスは非常に早い時期,実プロセスでは0.6s後には凹凸発生しているとSumiyaらによって報告されている.シャッター法を使って観察された結果からは,まずエステルが除去され,その部分にフルオロカーボン堆積して,グラファイト化したダメージ層がエッチングを抑制していると解釈されていた.KrFレジストでは表面が荒れないのに,ArFレジストでは極端に荒れることも報告しており,酸素含有量が原因と説明されている.[11]
 PMMAにArイオン(250eV)照射すると,グラファイト層2nm,クロスリンク層(2nm),低分子層(2nm),非変形層の4層構造になっていると解釈されており,表面の形態にはμmスケールで網目状やバブルなどが観察されていた.このイオン照射表面ではイオンエネルギーと温度に応じてポリマーに電気伝導性が誘起されることも報告されていた.[12-14] 最近では大阪大学の浜口らのグループからPMMAに500eVまでのArやCF3イオンを照射した場合にカーボン化した層が形成されると報告した.VUV光を同時照射してもエッチング収率には変化がないと結論している.一方で,PMMAの表面荒れが酸素イオンの場合には顕著な荒れが発生すると報告されている.[15]
 エッチング時にレジストには,イオンとラジカル(電気中性な活性種),プラズマ発光と様々な影響が働いている.この点について結論は出ていない.このことは,ポリマー表面とプラズマとの相互作用によって ,1.ボンド切断,2.クロスリンク,3.二重結合形成,4.分子脱離などといった過程が複雑に生じるためと考えられる.

6-6.表面ラフネス形成モデル

 改めて形態変化をもたらすモデルには以下が挙げられる.
1.マイクロマスク
2.化学的スパッタレート変調
3.物理的スパッタレート変調
1のマイクロマスクはエッチされない物質が局所的にマスクして,周囲が削れることに由来する.マスクの形成に表面拡散による島成長や別の箇所から飛来して再堆積,極端には物質移動に依存したウィスカー形成なども含んで考えられる.[16] 2の化学的なスパッタレート変調は結晶面方位に依存したり,化合物で抜けやすい元素などがある場合に発生する.酸化物などの化合物では,イオンスパッタ時に酸素が抜けやすく,組成変化することが知られている.低スパッタ収率の物質と高スパッタ収率の元素が共存しており,組成比が変化することでスパッタ率が変化する.ミキシング効果は二次イオン質量分析などの分野では多く議論されてきた.[17] 3の物理的なスパッタレート変調は,表面拡散などにより隆起を生じるとスパッタの角度依存性から斜面の弾き飛ばしが優勢になりリップルを形成するということが知られている.この考えはBradley-Harperモデルに示されており,特に斜入射のスパッタ系でおきやすい.[18] すなわち,スパッタ収率の角度依存性と表面拡散で,表面幾何形状が形成されると報告した.このリップル形成には,Kuramoto-Sivashinsky (KS)方程式に基づいた説明が試みられており,凹凸をつくる速度が,表面の大きな曲率揺らぎと細かい領域で生じる物質移動による緩和との間のバランスによって生じると説明を与えるものである.[19] この点も現在議論が進んでいるところである.
 4番目の説明として,機械的な応力発生による皺の形成が考えられている.例えば90年代のコーネル大の実験では,部分的にエッチングしたポリスチレンポリマーをガラス転移温度以上で加熱すると,表面がうねりシワが発生すると報告されている.ビームエッチした後, 170℃1時間のアニールを施すと,エッチングした部分だけにμmスケールでシワが発生する.同じような現象は500eVのArイオン照射後に見られているが,プラズマエッチングした表面には見られていないため,高エネルギーの粒子の照射がシワの発生原因であると考えられた.イオンエネルギーが高いほど,ボンド切断とクロスリンクが同時に生じて,その比率により分子量分布が決定され,このクロスリンク層は1keVの照射で22nm厚さ存在し,クロスリンクした薄い層が形成されてこの層がバックリングすると考えられた.このようにμmスケールのシワの発生は古くから知られていた.[20,21]

7.レジストへの凹凸形成の実際 [22,23]

 我々のグループでは,ArFレジストの凹凸について,どのように発生するのか?実際のプラズマをビーム状にイオンエネルギーを制御して引き出して,レジストに照射していく実験を行った.すなわち,プラズマからイオンのエネルギーを単一に固定して,光やラジカル量の比率を制御して表面反応を解析することができ,この現象を調べてみると,イオンの照射量に応じて表面の化学的・物理的な変化を観察できた.図3にはArFレジストにフルオロカーボンのイオンを照射していくと,はじめ酸素含有の官能基が消失する.これは赤外分光で観察して,量子化学計算による振動モードとの対応からメタクリレートに由来する結合の消失と解析される(~2e15 /cm2).その後,フッ化と同時にグラファイト化した表面を生じる(~4e15 /cm2).その後に平坦性を保っていた表面に顕著な凹凸を形成する(~6e15/cm2).というように,観察の一例から時間発展をもってレジスト表面が刻一刻と変化して凹凸を形成していく様子がうかがえる.ここで着目している点は,グラファイト化が生じた直後には,凹凸形成がほとんどなされていない点であり,その後の照射によって凹凸が発生していくように見られる点である.すなわち,フルオロカーボン膜が堆積した表面にイオン照射を生じて,部分的にフルオロカーボン層がグラファイト化して局所的な化学的な反応の違いを生じてnmスケールの凹凸を発生させているように解釈できる.

図3 ArFレジストにフルオロカーボンのイオン照射した時のnmスケール凹凸の発生過程 [22]

8.レジスト凹凸の抑制

 今後,レジストの凹凸形成モデルについてはさらに議論が発展することが望まれている.結論がでているわけではないが,これまでの結果を総括すると,プラズマからの紫外光照射によるレジストから酸素(C=O)が減少する化学組成変化があり,イオン照射面でクロスリンクやグラファイト化,局所エッチングなどの構造変化や構造変性があり,機械的な構造変化が無視できないといった点が挙げられる.これらの原因を抑制するように,プラズマ光のマネジメント,ポリマー構造やガスケミストリで表面変性の制御などが検討されている.現在のところ,レジストの荒れ対策に有効な手段としては,1)レジストのキュア,2)プラズマプロセスの条件,使用ガス種,イオン/ラジカル比,イオンエネルギーなどをプラズマ光,ラジカル,イオンといった入射種が与える影響を踏まえてプロセス設計が必要であり,決定打には乏しい.今後の飛躍的な研究成果がこれからも求められている状況であろう.

9.まとめ

 プラズマエッチング中のプラズマと固体表面との相互作用が明らかになれば,プラズマプロセスの深化とその応用の深化に長足な進展が期待される.さらに,全産業を根底から支えているプラズマプロセスの発展は,あらゆる産業のボトムアップに繋がっている.
 プラズマプロセスの過去35年の歴史において,固体表面に入射するイオンやラジカルの定量な計測が可能になってきた.特に,ラジカルについては,名古屋大学を中心とした先駆的な研究によって,ラジカル密度の時空間の挙動が把握できるようになってきている.次世代のプラズマエッチングプロセスの開発には,ラジカルを含めた全粒子のフラックスを基に,表面反応に大きな影響を与えている粒子の特定とその反応過程の理解をすることが必要不可欠である.そのために我々は,長年に亘って表面反応をin-situで計測できる装置を製作し,大気暴露によって変質することなくプラズマが与えた表面を実測することで,先進プラズマナノ科学を構築することを推進している.

参考文献

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(c) 2013 Kenji Ishikawa


Last-modified: 2020-11-20 (金) 23:08:47