Book11

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本原稿はASET環境エッチング研平成15年度成果報告書のために柳下さんと共著で2003年3月に執筆したものである。

1 緒言

 低消費電力化,高速,高集積な半導体集積回路(ULSI)の製造を目的として,従来のSiO2に変わる誘電体として低誘電率(Low-k)材料,ならびにAlに変わる導電材料としてCuの導入が加速している。Cuの導入はダマシン法による配線構造の形成を要し,この方法ではLow-k材料をエッチングして下層の導電体Cuに(ビア)コンタクトを取ることとなる。Alとは違いCuは酸化物の形成エンタルピーが低く酸化されやすい。そのため,Cuとのコンタクト形成には形成前の表面処理技術や酸化防止手法が必要となってきている。

これまで成膜前処理には還元性雰囲気でのスパッタ清浄化などが用いられている。しかしながら,スパッタ清浄ではビア底部からCuがビア側壁に飛散付着したり,コンタクト形成するCu面が損傷を受けることなどが危惧される。それらを回避するためには化学的で、低温,低損傷なプロセスであることが望ましい。

 本研究においては,酸化防止として真空一貫プロセスを選択し,そのLow-kエッチング後処理からCuビア成膜前処理にかけてCu表面を真空ドライ下で制御しうる表面処理手法を環境影響の少ない技術として開発し,界面制御に役立てることを目的とした。

 この目的を達成するために,特に,低温,低損傷なプロセスを開発するため,有機酸やアルデヒド,アルコールといった有機ガスを用いたドライ洗浄技術の開発に取り組んだ。

2 研究方針

 配線構造形成におけるパフォーマンスを最適化する上では,接触(コンタクト)抵抗を低減し,膨大な数のビアを均一な孔サイズで形成するなど,高い信頼性が必要となる。このような目的を達成するために行うCu表面処理に必要な要素は,

(a) 銅酸化物を還元し,金属銅表面を露出させる,

(b) 側壁などに付着した金属銅や銅化合物のエッチング,

といった2つが上げられる。そこで,本研究の課題は『銅酸化物還元』と『金属銅・銅酸化物のエッチング』とした。

 はじめに,酸化銅の還元,すなわち金属銅表面を露出するには以下の

(i) 金属銅はエッチングせずに酸化銅のみを還元,

(ii) 金属銅はエッチングせずに選択的に酸化銅層のみをエッチング,

(iii) 酸化銅層と(若干の)金属銅層と共にエッチング,

といった方法が考えられる。

 従来,上述の銅表面洗浄の目的には,溶液の酸洗浄が用いられてきた。しかしながら,半導体製造で通常使用される酸洗浄液の多くではCu膜がエッチングされてしまう。これは有機物除去を目的とした硫酸/過酸化水素水混液などにも当てはまる。そこで希フッ酸溶液洗浄が使用されるが,微量ながらビア側壁に付着した金属銅は除去されないなどの問題を生じており,オゾン添加やオゾン水洗浄といった酸化性をもたせたり,シュウ酸希釈水洗浄などの利用が提案されている。[1](Cuの溶液エッチング剤としては硝酸,希塩酸+過酸化水素水洗浄などが知られる。)各種表面処理技術の特徴を表1にまとめておく。このように,Cu酸化物除去や金属Cuを制御してエッチングする目的には,酸性が弱く銅化合物も形成しやすい有機酸を使用することは望ましい。そこで,金属銅もしくは酸化銅と有機酸との反応について調べることとした。

表1 各種表面処理技術の特徴

	方法 	酸化銅 	金属銅エッチング 	備考

薬液 酸洗浄 ○除去 ×多量 Cu膜減り

	希フッ酸洗浄 	○除去 	◎なし 	
	シュウ酸洗浄 	○除去 	○なし 	
	温酢酸洗浄 	○除去 	○なし 	

ドライ βジケトンガス ○除去 △微量 ×F含有

	有機酸ガス 	◎還元 	○微量 	○低分子

 有機酸とは,一般式R-COOHで表される化合物群である。分子内に存在する-COOH基の数により,モノ-,ジ-,トリ?カルボン酸と呼ばれる。代表的なカルボン酸を表2に上げておく。表より分子量が大きいほど沸点が高くなることがわかり,蒸気圧が低くなることを示している。さらに,ジ-,トリ-カルボン酸全ては室温で固体であるために利用に適さない。その結果,適度な蒸気圧が得られるモノカルボン酸を利用することを考え,ぎ酸(HCOOH)と酢酸(CH3COOH)に絞り検討する。

表2 有機酸の代表例と物性
名称 化学式・示性式 沸点(℃)
ぎ酸 HCOOH 100.6
酢酸 CH3COOH 118
プロピオン酸 CH3CH2COOH 140
吉草酸 CH3(CH2)3COOH 186
シュウ酸 HOOC-COOH 100.6
マロン酸 HOOC-CH2-COOH -

 ぎ酸とは有機酸の中では強い酸であり,分子構造中にアルデヒド(COH)基をもつために還元性も有する。160℃以上では二酸化炭素(CO2)と水素に分解する。(また,濃硫酸(H2SO4)と共に熱すると一酸化炭素(CO)を発生する。)ぎ酸と銅の反応では,反応生成物としてぎ酸銅が生じ,ぎ酸銅四水和物(Cu(HCOO) 4H2O)がよく知られている。

 また,酢酸は有機酸の代表的な存在であり,弱い酸である。酢酸と銅の反応では生成物として酢酸銅を生じ,酢酸銅(I)と酢酸銅(II)の二種類の化合物が知られている。酢酸銅(I)(Cu(CH3COO))は,酢酸銅(II)のアンモニア性溶液(過剰の酢酸アンモニウムを含む)をヒドロキシルアミンで還元して得られ,無色針状結晶であり,乾燥状態で安定であるが水と速やかに反応し,酸化銅(I) に分解する。一方,酢酸銅(II)一水和物はCu(CH3COO)2H2Oの化合式で知られ,酢酸に酸化銅(I)または塩基性炭酸銅(CuCO3 Cu(OH)2)を溶解させた溶液から一水塩の析出物として得られる。この一水塩は暗緑青色の結晶(単斜晶系)で,実際の構造は二量体分子(Cu2(CH3COO) 4(H2O)2)である[2]その構造は,図1のように,二つのCuが結合し,それらCuに四つのCH3COOが配位して,さらに2つのH2Oが配位する複核六配位構造である。各結合の長さはCu-Cuで2.64Å,Cu-O(CO)で1.97Å,Cu-H2Oは2.20Åとなっている。(比重1.9g/cm3,水,アルコールおよびエーテルなどに溶け,水に対する溶解度は2.30g/100mlである。)また,その他にも低温では五水塩(斜方晶系)が析出し,一水塩を真空中100~105℃で脱水すると無水塩になる。

図1 酢酸銅(II)一水和物の構造[2]

3 実験装置と方法

(1) 有機酸暴露方法と装置

 有機酸暴露にもちいた実験装置の概略図を図2に示す。ガス調製部,暴露ガラス容器,基板加熱部,生成物捕集部(液体窒素トラップ)から構成される。

図2 実験装置の概略図

ガス調製方法としては,下記2つの方法を採用した。

① バブラー:バブラーの概略は前図の通り,ガスを発生させたい溶液を入れたガラス製容器にキャリアガス導入口から乾燥窒素ガスを吹き込み,ガラス容器内の蒸気がキャリアガスとともに導出口より押し出される。ガスの濃度は[その温度での飽和蒸気圧]と[バブラー容積],[吹き込む窒素ガス流量]で規定される。しかしながら,この方法では高濃度のガスが調製できる反面,濃度の制御は大雑把にしかできない。本報告で使用した条件は,バブラーを室温で保持して,ぎ酸蒸気と酢酸蒸気はそれぞれ,5%と1%程度に調整される。

②パーミエータ:外観写真を図3に示す。ディフュージョンチューブ(D-tube)をガス発生源とし,数1000ppmまでの濃度で調製したガスを連続的に発生できる。パーミエータ内部の恒温槽にD-tubeは保持されることで,単位時間に管壁を浸透拡散するガス量あるいは管内の液体が蒸発拡散する量は一定となる。このD-tubeから発生する一定濃度のガスを清浄な不活性ガスでもって希釈することで広範囲の濃度で調製されたガスを生成でき,長時間安定して供給できる。この方法で調製するぎ酸ならびに酢酸蒸気ガス濃度の条件を表2に示す。希釈N2流量をかえて,100?500ppm程度に調整した。

図3 パーミエータの外観写真

表2 パーミエータによる濃度制御の条件
有機酸種 拡散速度(μg/分)
ぎ酸 500
酢酸 350

※D-tubeはD-30全長4.0cm,首長1.5cm,恒温槽35℃時

(2) 暴露中その場観察方法と装置

 反応表面をその場で赤外分光法で観察をすることに使用した実験装置の概略を図4に示す。この装置はHarrick社からRefractorTM Reactorとして市販されている。最大50mm径の試料が取り付けられる加熱ステージを有している。ステージ中央の20mm径程度で均熱が得られ,試料の温度を室温から400度まで設定できる。

大気圧下での実験においては,この装置の導入口から排気口にパーミエータで濃度制御したガスを流通させた。真空排気した実験においては,排気口からドライ真空ポンプで排気して,液体窒素で凍結させて真空脱気を施した薬液を蒸発させたガスを質量流量制御器(日立金属製マスフロー670型)で流量制御してガスを流通させた。

 反応器の両側面には100mmの間隔をもって25mm径のウェッジ窓(図のように傾斜角をもった窓)を取り付けることができ,この窓によって赤外光は屈折してステージ上の試料表面に焦点され,入反射することで赤外反射分光法によりその場で表面の観察が可能である。窓と偏光子の材質はZnSeまたはKRS-5を利用した。また,光路となる装置内のガスも同時に検出される。

図4 その場赤外分光観察装置(RefractorTM Reactor)

 次に,X線光電子分光(XPS)法による表面分析を行うために使用した実験装置の概略を図5に示す。ガス導入/排出機構と加熱ステージを設けている。加熱ステージには最大30mm角の試料が取り付けられる試料フォルダーを設置でき,この試料フォルダーごと試料を真空下で移送装置内に取り出すことができる。ここではターボ分子ポンプを用いて排気することで,数10-2Pa以下の真空下で搬送が施される。すなわち,この移送装置を使用してロードロックに搬送することで,試料は真空下でXPS装置(Vacuum Generator製ESCALAB 250i)に導入される。殊に金属銅表面は活性であり,大気下で搬送した場合には一瞬で自然酸化膜の形成が見られるが,本真空移送装置をもちいれば自然酸化膜の形成を抑制することができる。

図5 XPS移送装置付き実験装置(二つのゲート間で取り外し可能)

(3) 分光評価法

 本研究においては,銅の酸化状態や表面化学種の分析に赤外分光法とX線光電子分光(XPS)法を使用した。

 はじめに銅表面の分析方法の概要を示す。大気下におかれた金属銅の表面は自然酸化の被膜で覆われている。また,アッシング処理といった酸化性の強いプロセスが施された場合には酸化銅の被膜が形成されている。[3] このような銅表面の状態は大別して,(1) 金属銅,(2) Cu2O,(3) CuO,(4) 水酸化銅(Cu(OH)2)にわけられる。これら酸化状態の違いはXPS法を用いて図6のように区別されて観察される。運動エネルギーがおよそ919.0eVと916.7eVに位置するCuのL3M4,5M4,5のオージェ電子スペクトルから金属CuとCu2Oの状態が特徴付けられる。また,結合エネルギーがおよそ934eVに位置するCu2p3/2の光電子スペクトルからCuOとCu(OH)2の状態が特徴付けられる。これらに対応してO1sの光電子スペクトルはCuOが529.5eV,Cu2Oが530.3eV,Cu(OH)2が531.1eVに観察される。[4]

図6 銅表面のXPSによる観察 [4]

CuLMMオージェスペクトル(左)とCu2p3/2 (右)

 表面被膜が数10nmと厚くなった場合には赤外分光法をもちいる。赤外分光法ではCu2OとCuOは明瞭に分離されて観察される。ただし,XPSに比べ感度が低い点とリファレンスが必要な点が不利であり,被膜厚さが数nm以上で使用する。650cm-1付近のピークはCu2Oに帰属し,550cm-1付近のピークはCuOに帰属する。[5]

 金属銅上の酸化銅を高感度に測定したいという要請からp偏光(電場を入射面に平行)の斜入射で反射測定する必要があり,この測定上の注意点を光学計算をもちいた結果から説明しておく。光学計算はフレネルの反射透過係数に基づいておこなう。[6] このときパラメータは積層膜の複素誘電率(もしくは複素屈折率)と厚さである。金属銅とCu2Oの複素誘電率を図7に示す。[7](注記:Cu2Oの透過吸収ピークは609cm-1に位置し650cm-1付近には見られない。このように反射測定ではピークの位置が光学的にシフトして観察されることが多々ある。)金属銅膜の吸収係数から厚さが300nm程度以上では半無限媒質とみなせる。(すなわち,この厚さ以上堆積しておけば下層のSi基板の影響が無視できる。)この金属銅の表面にCu2Oが形成された場合の赤外スペクトルと640cm-1のピーク強度の膜厚依存性を図2.7.8に示す。前述のその場観察装置の80度斜入射のp偏光反射測定の条件で計算により求めた。(s偏光では反射時に電界相殺され感度がない。)この結果からCu2O膜が100nm程度までは640cm-1のピーク強度変化が0.45%/nmであり,膜厚を近似的に求めることができる。

図7 金属銅(上)とCu2O(下)の複素誘電関数

図8 Cu上Cu2O薄膜の計算赤外スペクトル(上)と

Cu2Oピーク強度の膜厚依存性(下)

 次に表面化学種の分析方法を説明する。ここでは,本研究で対象とするぎ酸や酢酸といった有機酸暴露に関係する化学種についてのみ述べておく。はじめにぎ酸と酢酸の蒸気のスペクトルを図9に示す。[8] カルボキシル基の特徴的な振動吸収が1800cm-1付近に,OH基が3600cm-1付近に見られる。水素とメチルの違いが1200cm-1付近に見られている。これら蒸気を銅表面に暴露して吸着した表面化学種からの赤外スペクトルについては後述するが,表面吸着したカルボキシル基の吸収は1600cm-1に低波数シフトしてみられる。初期吸着の段階ではOH基の吸収はみられないことなどから,カルボキシル(R?COO-)アニオンとなり,銅との間でカルボキシレート塩を形成していることを示している。多層吸着すると有機酸同士のダイマー(トリマー)が形成されて3500cm-1付近に水素結合(?OH…H?)の吸収が見られる。

図9 ぎ酸(左)と酢酸(右)蒸気の赤外スペクトル[8]

(4) 質量分析

 前述の暴露装置のトラップ部で捕集した飛散除去生成物の化学構造を解明する方法として,本研究においては「液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)法」を採用した。採用の理由は,生成物が銅の錯体など,低揮発性である可能性が高いため,通常の揮発性の高い有機化学物質の構造解析で使用されるガスクロマトグラフィ-質量分析(GC/MS)では対応不適と考えたためである。

LC/MSは液体クロマトグラフ(LC)と質量分析計(MS)が直結した装置で,LCで分離された液体試料を,真空装置であるMSに導入し分析する方法である。本来,MSは目的成分を気相中でイオン化して,このイオンを高真空下で検出分析する装置である。したがって,LCを単純にMSに接続しても液体である移動相が気化した大量のガスがMS内に導入され,真空度の低下を引き起こし目的成分のイオンが検出できなくなる。このため,いかに液体相を取り除くかがLC-MSでは重要なポイントになり,これまで様々なインターフェースが開発されてきた。現在,感度,安定性,使い勝手等がすぐれたインターフェースとして多用されているのは,「大気圧イオン化法(Atmospheric Pressure Ionization: API)」と呼ばれる方法である。

 API法は,名前の通り大気圧下でイオン化するのが特徴で,溶媒は真空下にならない点で非常に有効である。 現在API法には主に2つのインターフェースがある。

(1)エレクトロスプレー(Electrospray Ionization: ESI)法

 イオン性・高極性化合物に有効なイオン化法である(図10)。 ESI では試料溶液は,先端に3~5kV程度の高電圧を印加したキャピラリに導かれる。 キャピラリの外側から霧化ガス(ネブライザーガスとも呼ばれる)を流しスプレーすることで,印加した電圧と同符号の細かな帯電液滴が作られる。 帯電液滴は移動の過程で溶媒の蒸発・表面電場の増加が進み,電荷同士の反発力が液体の表面張力をこえると分裂する。蒸発と分裂を繰り返すことにより,微細な液滴になり,最終的には試料イオンが気相中に放出されると考えられている(イオン蒸発)。 ESI は最もソフトなイオン化法で,高極性,難揮発性,熱不安定化合物に適用が可能である。

図10 エレクトロスプレーイオン化(ESI):イオン蒸発[9]

(2)大気圧化学イオン化法(Atmospheric Pressure Chemical Ionization : APCI)

 図11のように, ESIと似た構造のインターフェースだがイオン化の原理が異なり,主に低・中極性の化合物に適している。 APCIでは,試料溶液をヒーター中(400℃程度に加熱)にN2ガスなどを用いてスプレーし,溶媒と試料分子を気化させる。 溶媒分子はコロナ放電によってイオン化され,安定した反応イオンを生じる。この反応イオンと試料分子の間でプロトン授受が起こり(イオン分子反応) ,試料分子はプロトン付加あるいはプロトン脱離を起こしイオンとなる。 このイオン分子反応にはプロトン移動反応,求電子付加反応などいくつかのパターンが知られている。

図11 大気圧化学イオン化(APCI):イオン分子反応[shimadzu]

 上記2つの方法は,印加電圧や検出器の極性を換えることにより,正または負のイオンを検出できる。さらに,検出器の前に置かれたイオン収束用のレンズの印加電圧を換えることにより,検出器に到達するイオンを分解したり,分子イオンのまま検出したりすることができる。その反面,使用する装置によっても物質によっても条件を事細かに設定しなければならない。そのことから,GC/MSで見られるようなスペクトルライブラリというものは意味をなさず,存在しない。最適条件での分析は一重に分析者の技量と化学的知識に依存してしまうこととなる。

 本検討においては,1試料につき(1) ESI法,(2) APCI法の二つの手法で,かつ正/負イオンの検出といった四種類の測定を行い,その都度収束レンズの電圧調整等の最適条件設定をおこなっている。

(5)試料作成

 ①表面処理評価用Cu膜

 評価に使用したCu薄膜は,6インチSiウエハに100nmスパッタ成膜したものを使用した。劈開法により8.4×6.5cm2の大きさに切り出している。[HCl/HNO3/H2O2]混合液に15分間浸漬してCu膜を完全に除去した。Cu膜前後で秤量して,Cu膜の総重量は[初期重量(7.9372g)]-[Cu膜除去後の重量(7.9322g)]=4.9mgとして求めている。Cuの密度の文献値は8.97g/cm3であり,Cu膜は100nmであることがわかる。この厚さは断面透過電子顕微鏡(TEM)観察した厚さに一致しており,この重量変化測定の秤量精度より10nm程度のCu膜減り量を調べることが可能である。一方、IR-RAS測定は2インチSiウェハに1000nmスパッタ成膜したものを使用した。

②銅酸化膜の作製

 前述の①の試料を大気中もしくは酸素雰囲気下,200度程度で熱酸化することにより酸化銅(I)(Cu2O)膜や酸化銅(II)(CuO)膜を作成した。前述の通り,Cu2OとCuOの膜厚と組成は分光手法や断面TEM/SEM法で分析した。200℃程度の低温で熱酸化した場合には,酸化時間の進行とともに表面は褐色を経て赤紫に変色していく。これは表面にCu2O膜が形成されていることを示している。一方,250℃程度とやや高温で熱酸化した場合には,表面は灰色を経て黒色となり,CuO成分が形成される。260℃で熱酸化した場合の銅表面の赤外スペクトルを図2.7.12に示す。このように,CuO成分はCu2O膜の一部となっている場合が多く,赤外スペクトルでは二成分が分離して検出される。また,これら酸化銅表面のXPSスペクトルを図2.7.13に示す。

図12 銅酸化物の赤外反射スペクトル Cu2OとCuO

図13 酸化銅表面のXPSスペクトル:(a) CuO,(b) Cu2O+CuO

4 実験結果

(1) 酸化銅の有機酸蒸気+加熱処理による還元

 200℃に保持したホットプレート上のガラス製容器内に赤紫色の酸化銅を形成したCu試料を設置して窒素ガス希釈した酢酸蒸気をバブラー法で導入した。酢酸蒸気の濃度は飽和蒸気圧約2kPaと希釈流量0.5L/minから1%程度と見積もられる。導入後,間もなく赤紫色は消失して,金属銅色の表面が出現する。また,この表面を赤外反射分光法により分析し,640cm-1のCu2Oバンドの消失とXPSによる金属銅状態への還元を確認した。(図15)

 以上の結果は酢酸蒸気暴露により酸化銅層の金属銅への還元が可能なことを示している。しかしながら,還元のみならず酸化銅層の除去の可能性もあり,膜減りと飛散除去物の捕集によってエッチングの有無について分析した。

 異なる膜厚のCu2O層の試料を準備して酢酸蒸気暴露によって金属銅表面を露出する前後に秤量して重量変化を求めた結果,Cu2O膜厚に比例して重量が変化することから酸化銅はエッチングされていることがわかる。ここでの酸化銅の除去速度は約1.40nm/分である。

 さらに,酸化銅に加えて金属銅も削れているかを調べるため,以下の実験を行った。100nm厚さのCu膜を成膜したSiウェハを劈開法により9.0×8.5cm2の大きさに切り出した。200℃で酢酸蒸気に300分暴露した。暴露前後で秤量し,[初期重量11.4630 g]?[暴露後の重量11.4624 g]=0.6 mgの重量変化が得られ,Cuの密度が8.9 g/cm3であることから約8.8 nmの膜厚が減少したと見積もられた。自然酸化膜厚はTEM観察結果からせいぜい2nm程度であるから,金属銅の膜減りを示している。ただし,暴露時間が5時間と長いために酸化銅の除去速度に比べ遥かに遅く,約0.03nm/分と1/50に過ぎない。この膜減りは酸化膜が削れた時点で処理を停止することで,実用上の問題はないと思われる。

図15銅表面のXPSスペクトル:(a) 初期,(b) 金属銅露出後

survey (上)とnarrow(下)

(2) 銅表面カルボキシレート形成のぎ酸と酢酸蒸気処理の比較

 有機酸蒸気暴露による銅表面処理においてカルボキシレートの形成が重要であると考えられる。すなわち

Cu(s) + O(s) + 2 R?COOH(g) → Cu (R?COO)2 (s) + H2O(g)

(ここでsは固体表面,gは気相の意味)の反応が考えられ,有機酸の脱プロトン化により、酸化銅表面から酸素を触媒的に引き抜くことへ寄与する。そこで,末端基(R)の違うぎ酸(HCOOH)と酢酸(CH3COOH)との違いを評価する目的でカルボキシレート形成速度を比較する。

 50mm径シリコンウェハに金属銅をスパッタ法により1μm厚さ堆積した基板を反応炉内ステージ上に設置して,パーミエータで窒素ガス中に濃度400ppmに制御して混合した酢酸蒸気を大気圧下室温で銅表面に暴露した。その暴露過程に30秒間隔で取得した実時間赤外スペクトルを図16に示す。このスペクトルには暴露ガスの信号が含まれている。この暴露ガスのスペクトルを差し引き,表面変化分のみを示すスペクトルを求めた結果を図17に示す。このように1600cm-1付近のCOOに由来する信号が増加しており,暴露時間の経過とともに表面にカルボキシレートが形成されていくことがわかる。1450cm-1付近の信号はC-CH3基の振動吸収に由来する。一方,同じく400ppmに濃度制御したぎ酸蒸気を暴露した時に取得した実時間スペクトルを図18に示す。ガス成分を差し引いて表面変化のみの赤外スペクトルを求めた結果を図19に示す。

図16 酢酸400ppm蒸気暴露中の取得した赤外スペクトル

図17 酢酸蒸気暴露下の表面カルボキシレート形成

図18 ぎ酸400ppm蒸気暴露中の赤外スペクトル

図19 ぎ酸蒸気暴露中の表面カルボキシレート形成

 以上の結果であるぎ酸と酢酸の実験について表面のカルボキシレートに由来するピークの変化を比較した。この結果を図20に示す。このようにぎ酸にでは酢酸よりカルボキシレート形成速度が6?7倍程度に早いことがわかる。この結果は,カルボキシレートが有機酸のOH基の水素脱離により進行しており,表面酸素の引き抜き反応速度と対応することが考えられる。一般に表面での触媒的な反応を含めると酸解離などの反応定数を理論的に予測することは難しい。今回のぎ酸が酢酸に比べ6?7倍といった結果は,誘電率?75といったH2O中での酸解離定数(pKa)が1桁違うこととよく一致しており,定性的な議論は満足する。

図20 有機酸蒸気暴露中の表面カルボキシレートの

形成速度の比較 ぎ酸もしくは酢酸(濃度400ppm)

(3) 有機酸蒸気+加熱処理による酸化銅の反応速度

 次に基板温度を上げて有機酸蒸気暴露することによる酸化銅の除去過程を観察する。

 50mm径シリコンウェハに金属銅をスパッタ法により1μm厚さ堆積した基板を反応炉内加熱ステージ上に設置して,真空中で190度に昇温する。190度になった時点で酸素ガスを1.5kPa程度導入して熱酸化膜を形成した。このように低温で形成した場合には膜組成はCu2Oであり,5?10分酸化させ10?20nmのCu2O膜を形成した。このCu2O膜を形成した試料を,基板温度110℃?300℃の範囲で,パーミエータで濃度制御して窒素ガス中に400ppm混合したぎ酸蒸気を大気圧下で暴露した。その過程を赤外分光法で実時間スペクトルを30秒間隔で取得し,暴露中の赤外スペクトルを取得した。基板温度が190℃でのCu2O膜の減少過程を図21に示す。一方,400ppmの酢酸蒸気では基板温度が260℃と高い時に同程度のCu2O膜の減少が見られた。初期の酸化膜厚が数nmの時の減少結果を図22に示す。(窓材の違いで500cm-1以下に感度がない。)酢酸の濃度を2000ppmに上げて観察した結果を図23に示す。ぎ酸の方が低温で反応し,高い反応性を示す結果となった。Cu2O減少速度は基板温度が高い程速く,400ppm酢酸蒸気では300℃において約2nm/分の速度で除去された。また,両有機酸処理後の表面においてもXPS分析結果で金属銅の露出を確認している。

図21 ぎ酸400ppm蒸気暴露によるCu2O膜の減少過程(基板温度:190℃)

図22 酢酸400ppm蒸気暴露によるCu2O膜の減少過程(基板温度:260℃)

図23酢酸2000ppm蒸気暴露によるCu2O膜の減少過程(基板温度:260℃)

(4) 金属銅上でのぎ酸と酢酸の分解反応

 前項で述べた酸化銅の除去反応が終了し,金属銅が露出した後にもぎ酸蒸気暴露を続けると気相中にCO2の発生が検出される。この現象は酢酸の場合にも同様に見られる。(酢酸では発生量は圧倒的に少ないが,ともかく)これは金属銅上での有機酸の分解を示している。

 50mm径シリコンウェハに金属銅をスパッタ法により1μm厚さ堆積した基板を反応炉内加熱ステージ上に設置して,基板温度110℃?300℃の範囲で,パーミエータで濃度制御して窒素ガス中に400ppm混合したぎ酸蒸気もしくは酢酸蒸気を大気圧下で暴露した。その暴露中に2350cm-1付近に見られるCO2発生が見られた。この発生量は基板温度が高い程CO2の発生量が多い。

 この有機酸の分解が

Cu(s) + R?COOH(g) → Cu(s) + CO2(g) + R-H(g)

の反応で生じているとするならば,ぎ酸ではH2も同時に発生しており,酢酸ではメタン(CH4)の発生が期待される。メタンガスは1400cm-1と3000cm-1に吸収をもっているので,同時に観察されるはずであるが,スペクトルには検出されていない。このことは,有機酸の直接的な分解ではないことを示しており,分子構造からもCO2が直接生成するとは考えにくい。すなわち,表面では

Cu(s) + 2 R?COOH(g) → Cu (R?COO)2(s) + H2(g)

の反応でカルボキシレートを形成し,ぎ酸の場合には

Cu (H?COO)2(s) → Cu(s) + 2 CO2(g) + H2(g)

逐次的にCO2が発生するが,酢酸の場合には

Cu (CH3?COO)2(s) → Cu (CH3?COO)2(g)

と末端のメチル基の分解反応が生じにくいため,生成した銅化合物の揮発とCO2分解が競合すると考えられる。このような反応温度に依存した有機酸自体の分解と銅化合物の揮発に関して詳細が解明されることが望まれる。

(5) 酸化銅の酢酸蒸気+加熱処理の反応生成物分析

 有機酸蒸気暴露で銅表面から揮発する生成物の化学構造を分析した結果について述べる。

 大気下200℃加熱で酸化膜を形成させたCu膜/Si基板をガラス製暴露容器内に設置し,基板保持温度200℃で容器内に有機酸蒸気をN2バブリング導入し,飛散してくる生成物を液体窒素温度で捕集した。この捕集生成物を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)法で分析した。

 酢酸(CH3COOH)蒸気暴露で生成した揮発物を捕集後,LC-MS分析したスペクトルを図24に示す。イオンのフラグメント(m/z)が214と216 に見られ,それら信号の強度比は63Cuと65Cuの同位体比である7:3 に合致する。その他にも,242と244,267と269,403と405にも同位体強度比の信号が見られる。これらは銅を一個含む化学種であることが分かる。次に,フラグメントが367と369,371の組みや{395,397,399}と{423,425,427}の組みは,強度比がCuの二量体から誘導される49:42:9に合致する。そのことから,これらの信号は銅を二個含む化学種,すなわち銅二核錯体であることが分かる。さらに,酢酸暴露で生成した化学種であることから,これらは酢酸イオンを配位子とする錯体と推定できる。

図24 酢酸蒸気暴露時に捕集した生成物からのLC-MSスペクトル

 これら銅を一個,または二個含む化学種の化学構造を解明するため,次の重水素化酢酸をもちいて同位体シフトを調べる検討をおこなった。重水素置換した場合,化学的性質と反応性は軽水素の場合と同じであるが,質量数は酢酸イオン一分子について質量数が三マス大きくなり,MSスペクトル上で高いマス側にずれて検出される。この同位体シフト数を調べることで,酢酸イオンの取り込まれ方を明瞭に識別できる。

 はじめに,通常酢酸暴露時に捕集した生成物のLC-MSスペクトルを図25aに示す。重水素化したd4-酢酸(CD3COOD)を用いて同一の実験をおこなった場合に得られたLC-MSスペクトルを図25bに示す。重水素化したことにより,銅化合物のフラグメントは220と222に見られた。 このように214[酢酸]から220[d4-酢酸]と差が6であり,このフラグメントは酢酸イオンの質量差([CD3COO]-[CH3COO])の二倍に一致する。これらから,質量数214と216のフラグメントイオンは一個のCuと二個の酢酸イオンを含むことが分かった。すなわち,63Cu(CH3COO)2であると考えられた。しかしながら,この場合には質量数は181となり,検出される214に比べ33少なく,電荷も中性となっている。ESI法測定では溶媒付加イオンの検出が多々報告されており,ここではメタノールを溶媒として使用しているので,検出フラグメントイオンにメタノールが付加した結果と推定した。このことから検出された銅化合物の構造は図2.7.26構造であると推察した。

 次に,フラグメントが367と369,371[酢酸]ならびに376と378,380[d4-酢酸] に着目する。これら信号の強度比は63Cu,65Cuの同位体比(7:3)の二量体から誘導される49:42:9に合致する。このことから,これらのフラグメントイオンは銅二核錯体と分かる。さらに,m/z=367[酢酸]と376[d4-酢酸]の差は9であり,酢酸イオンの質量差 ([CD3COO]-[CH3COO])の三倍に一致する。すなわち,検出成分はCu2(CH3COO)3(z)yの化学構造をもつと推定できる。このとき,(z)yの質量は(367-Cu2(CH3COO)3 )より64であり,かつ質量分析の原理からzとyは共に整数を満足しなければならず,yとzは1,2,4,8,16,32,64のいずれかしかとりえない。化学的に可能な組み合せはz=32,y=2とz=16,y=4であることは明らかである(例えば,z=1,y=64の場合には64個の水素が銅に配位した錯体を想定することになってしまう)。すなわち化学種の可能性にはメタノール(CH3OH)やO2がある。前述のESI法測定での溶媒付加特性を踏まえるとメタノールが2個配位していると推定された。

図25 酢酸暴露時に捕集した揮発化合物のLC-MSスペクトル

図26 銅化合物の構造:フラグメント214

 以上の考察を踏まえると,質量数が{395,397,399}の組みが[Cu2(CH3COO)4(CH3OH)H]+の化学構造をフラグメントイオンであると推定でき,現在のところその構造は図27と推察した。この構造は銅二核錯体であるが,先に示した酢酸銅(II)一水和物との構造とは若干異なる。

図27 銅化合物の構造(2):フラグメント395

5 考察

(1) 反応モデルとプロセス制御手法

 これまで述べてきたように200℃の程度の加熱の下、有機酸蒸気暴露により金属銅表面を露出させることができる。この金属銅表面露出は、酸化銅から酸素を引き抜いて還元することと、酸化銅部分をエッチングすることで達成される。

 カルボキシレート形成で見てきたように有機酸の脱プロトン化は表面酸素により効率的に引き起こされる。そのため、金属銅表面に比べ、酸化銅では選択的に有機酸の攻撃を受け、銅化合物形成によるエッチングは酸化銅に選択的に生じることとなる。この考えはJainらなど多くの研究者によっても指摘されている。Jainらはβジケトンの一つであるH+hfacに過酸化水素や酸素といった酸化剤を共存させることで銅のエッチングが可能であると報告している。H2O2とH+hfacを用いて、基板温度150℃で300nm/分、200℃において700nm/分の速度をもってエッチングが可能といわれている。[10] 単純有機酸を用いて、この速度は得られていないものの酸化銅上で、有機酸の脱プロトン化が促進され選択的な反応が進行することがわかる。

 次にエッチングと還元の制御は、表面酸素を引き抜き、金属Cuを露出させるプロセスを、銅化合物を形成して飛散除去するか、化合物は分解して銅が残存するか、といった点で制御される。これらの違いは、酸化銅が十分厚い場合や誘電体の側壁や誘電体表面の銅はエッチングして除去することが望ましく、一方、ビア底の銅がコンタクトする部分は銅がエッチングされることなく、酸化物が還元されることが望ましいといったプロセスへの適用には重要である。そのため、これらの還元とエッチングの側面が制御できるようにすることが今後求められている。還元が期待されるのは水素などの還元雰囲気で処理する方法である。実際、水素中アニールや真空中アニールによっても酸化銅は還元されていく。ただし、それに必要な真空度、つまり酸素分圧は比較的高いものである。今回の有機酸暴露処理と同じ条件となる大気圧下では、水素中アニール還元は300℃以上の基板温度が必要であった。その点、本報告にあるぎ酸蒸気処理では190℃の基板においても還元処理が達成し、銅化合物の飛散が確認されないことから、還元が達成されていると考えている。

 また、ぎ酸処理において特有である、金属Cu表面でのぎ酸分子の分解が確認される。このことはぎ酸イオンの水素が不安定であり、ぎ酸イオンが分解しやすいことを示しており、還元処理を支持するものである。

 今後の詳細な検討が必要とするものの、有機酸蒸気暴露をもちいる処理によって銅酸化物還元が200℃程度の低温で施されることがわかった。また、この有機酸処理は酸化銅に選択的になされ、使用する蒸気がぎ酸においては、特徴的なぎ酸イオン自身の分解のために還元が施され、酢酸においては銅酸化物の飛散によりエッチングが施される。この還元とエッチングの反応制御は有機酸イオン中の末端化学種により得られているため、酢酸のメチル基からプロピオン酸と変えた場合には、今後詳細はを調べていく必要があるものの銅化合物の揮発性を変える方向にあること以外は大きな違いはないと考えられる。

 したがって、ぎ酸と酢酸などを混合したり、処理シーケンスとして組むことで所望の表面処理が実現されると想像できる。その実現可否については今後進めていく。

6 結語

 有機酸蒸気暴露をもちいる処理によって銅酸化物還元が200℃程度の低温で施されることがわかった。この酸化銅還元処理は、従来報告されていたフッ素含有の高いβジケトンを用いることなく、ぎ酸や酢酸といった単純有機酸で達成される。また、この有機酸蒸気処理による反応性は、カルボキシレート形成における酸化銅選択性をもつ。ぎ酸を使用した場合には、特異的にぎ酸イオン自身の分解が生じ銅化合物の揮発がなく、酢酸を使用した場合には銅化合物が揮発し酸化銅のエッチングが施されることを明らかにした。

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(c) Kenji Ishikawa


Last-modified: 2020-11-20 (金) 23:18:37