GlowDischarge

Memorandum

直流グロー放電について

陰極の前面には,陰極暗部が形成され負グローが形成される.

陰極面から負グローまでの距離は,パッシェンの法則の極小火花電圧にほぼ一致する.陰極面と負グローの間に発生する陰極降下電圧で,正イオンが加速され,イオンが陰極面に衝突して二次電子を放出(γ作用)し,この二次電子が陰極降下電圧の電場で加速され,電離電圧以上に達することで,負グローに至る.すなわち,陰極発生,二次電子の電離によって負グローが発生する.

陰極暗部には,負グローから正イオンが入り,電子は入れない為に,正の空間電荷で満たされた領域を形成している.陰極暗部は陰極シースとも呼ばれ,強い電場が形成されている.陰極シースの厚さにわたって,シース内の電場は直線的に減少すると電位分布は,上の凸の放物線形状をもっている.

負グローは,電子とイオンが同数のプラズマ状態となっている.

ファラデー暗部は,負の空間電荷で満たされている.

陽光柱は,イオンと電子がほぼ同数となっている.軸方向の電場によって電子が加速され,電離(α作用)を生じるジュール加熱が起きている.電子がパワーを吸収する.電場により電子のドリフト速度から電流密度と電圧より,陽光柱のパワー損失が,電離作用をもたらす.ただし,弾性衝突による損失もあり,これらのバランスからプラズマが維持される.この電離が不安定波動を形成し、電離波を発生することが多い.

陽極の前面では,電子を加速する領域を形成して,陽極シースを形成していることが多い.

高圧力グローについて

圧力を100Paより高くしていくと,負グロー領域が縮小していき陽光柱が拡がってくる.

DC放電に見られる正規グローは,圧力と放電サイズにスケーリング則が見られる.すなわち,DC放電の陰極暗部の特性において,スケーリング則が低圧力領域で,1933年に von Engel, Seeliger, Steenbeck らによって提唱された.(von Engel, Seeliger, Steenbeck, Z. Physik 85 (1933) 144.)

大気圧近傍の放電においても,1957年に Gimbling が,このようなスケーリング則が見られることが示した.(W. A. Gimbling, Phys. Rev. 106 (1957) pp. 203. DOI

グロー放電では,圧力 p ,電極間隔 d , 陽光柱の電界 E , 放電電流密度 j , 電離増幅度(Townsend係数) α , の間には

pd = const ; E/p = const ; j/p^2 = const ; α/p = const

の関係が成立しているように見られる.つまり,圧力と電極間隔の積の値を一定に保てば,ガスの数密度あたりの電界は一定となる.陰極部での電離増殖を放電維持機構とするために,この条件下では,同じような放電電流密度と 同じような陰極部での電圧降下が見られることとなる.グローの条件でもある,電極の温度が十分低く保たれれば,この関係はなりたつ.(C. Maszl, J. Laimer, A. von keudell, H. Stori, arXiv.physics.plasma-ph 1508.06739v1 (2015) )

陰極部で,電圧降下 E , 正イオン電流密度 j を生じているとする.また,正イオン電流密度は,負グロー部の近傍では E に比例し,陰極の近傍では √E に比例する.このとき,放電において,陰極表面の電界と電流密度によって生じた熱が,熱伝達係数 k で失われていることで,グローの放電を生じていると考えられる.この条件となるエネルギーの収支バランスを考えれば,圧力が低い場合は,熱伝達による冷却にバランスする全電流密度が得られるので,電流密度が圧力の二乗に比例する.一方,圧力が高い場合には,熱伝達の冷却効果(温度Tでの熱伝達係数のべき因子 n をもちいて, k ∝ T^n)を β係数で示すと,β=(2n+2)/(n+2)と表せる.温度べき因子が1であれば,高圧力で 3/4 乗が得られる.これらのことを Gimbling は示した.

電流密度の圧力依存性が圧力の二乗に比例する関係については,水素や大気の1気圧下での実験結果でも得られている.(Gimbling, H. Edels, Brt. J. Appl. Phys. 5 (1954) 36 DOI; ibid 7 (1956) 376 DOI; Can. J. Phys. 34 (1956) 1466.)

陰極暗部の大きさが,プラズマ径に近づくと径方向に荷電粒子が損失する降下が大きくなり,放電電圧が上昇する.陰極の電圧降下領域は大気圧に近くなると,10μmであるため,正規グローを維持するためには,プラズマを小さくしなければならず,このようなプラズマはマイクロプラズマと呼ばれる.

陰極を電解液などの液体に変えた場合にも,同様のスケーリングが見られる.(P. Mezai, J. Phys. D: Appl. Phys. 31 (1998) 2818 DOI; ibid 39 (2006) 2534.)

(N. L. Bashlov J. Phys. D: Appl. Phys. 26 (1993) 410 DOI )



Last-modified: 2020-11-30 (月) 18:34:48